宇宙に遍在する銀河が織りなす「南極壁」と呼ばれる巨大構造 ハワイ州立大学の研究

2020年7月17日 08:06

印刷

ラニアケアスーパークラスター (c) ハワイ州立大学

ラニアケアスーパークラスター (c) ハワイ州立大学[写真拡大]

  • ラニアケアスーパークラスターを取り囲む腕のような構造をした南極壁 (c) ハワイ州立大学

 宇宙に存在する銀河は一様ではなく、銀河の密度が大きな場所とほとんど存在しない場所に分かれている。つまり宇宙には人間の想像をはるかに超えたスケールの大構造が存在しているのだ。7月10日にハワイ州立大学は、従来発見されていた大構造のスケールを超える宇宙の巨大構造の存在を明らかにしたと発表した。

【こちらも】初期宇宙形成の源、水素ガスの大規模構造「宇宙網」を発見 理研などの研究

 これまでに発見されていた宇宙最大の構造は、ラニアケアスーパークラスター(超銀河団)と呼ばれるもので、私たちの銀河系やおとめ座銀河団を含む10万個の銀河を包含し、そのスケールは直径5億2千万光年にも及ぶ。このような数字を出されても一般人にはピンとこないスケールである。この数字を分かりやすく表現すれば、私たちの銀河系の10万倍の大きさに相当するのだそうだ。

 今回発見されたこれを超える大規模構造は、南極壁と名付けられている。南極壁はラニアケアスーパークラスターのすぐ横に存在し、それを包み込む腕のような形で存在しており、銀河の密度がもっと高い部分が地球の南極の方向にあることから、この名前が付けられたものだ。

 超銀河団の境界を特定することは、非常に難しい作業である。ハワイ州立大学では、電波望遠鏡により、個々の銀河について移動速度の測定結果をマッピングする作業を進めている。移動速度と聞くと速さの情報だけをイメージしがちだが、移動速度には速さだけでなく、銀河がどこに向かって移動しているのかといった情報も含まれている。

 個々の銀河の移動速度を銀河の位置ごとに見ていくと、それぞれの位置によってある決まった傾向がある。そのことを利用して、似たような移動速度傾向を持つ銀河を関連付けていくと超銀河団が定義できるというわけだ。

 先に紹介したラニアケアスーパークラスターにおける個別の銀河の移動パターンは、重力による拘束を受けていないことが最近の研究で明らかになっているため、超銀河団としての大構造は時間の経過とともにバラバラに崩れてゆくことが予想されている。その意味ではつかの間の存在でしかないのかもしれない。

 南極壁は電波望遠鏡で観測が及ぶ領域をはるかに超えたスケールの超巨大構造で、我々が観測できるのはそのごく一部分にすぎない。つい最近までこの構造が発見されないまま見過ごされてきた原因も、そのあまりにも大きなスケールが起因している。

 なにせ地球から観測できる部分の視角だけでも200度にも及ぶ。これは地上で私たちが目にすることができる最大視野(約180度)を超えており、例えば海を眺めている場合を想定すると水平線より上の世界しか私たちには見えないが、その更に下の方向に20度分も銀河団が広がって見えていることになるのだ。 (記事:cedar3・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事