火星の衛星、公転軌道の傾きはかつて存在した環が原因か 米研究機関

2020年6月5日 19:59

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火星衛星ダイモスの姿。公転軌道面が火星の赤道面からずれている。(c)NASA/JPL-Caltech/University of Arizona

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 フォボスとダイモスという火星の2つの衛星は、1877年に発見された。これらの衛星は重力によって捕らえられた小惑星だと長年信じられてきたが、ダイモスの公転軌道面が赤道面と約2度ずれていることが謎だった。米SETI協会は、かつて存在した環がダイモスの公転軌道の傾きを生み出したという新説を提唱している。

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■将来火星周辺に環が形成される

 フォボスとダイモスは、火星に天体が衝突することで同時に発生したと考えられている。2つの衛星の公転軌道面は、火星の赤道面とほぼ同じだ。だがフォボスよりも小さく、火星から離れたダイモスの公転軌道面が、赤道面と全く同じではないという点は、これまであまり重視されなかった。

 SETI協会と米パデュー大学の研究者から構成されるグループは、フォボスが、自身と火星の重力の相互作用により、火星に近づいていることに気づいた。将来火星周辺に環を形成するまで、重力の作用は続くという。

■フォボスの「先祖」がダイモスの公転軌道面を傾かせた

 研究グループは、環と衛星の形成が循環する新説を提唱した。新説によると、数十億年以上にわたり火星の衛星は環によって破壊が続いた。30億年前にはフォボスの先祖となる衛星が存在し、質量はフォボスの約20倍だったが、環と衛星の形成の循環が続いて2度発生し、フォボスは現在の姿になったという。

 新説はダイモスの公転軌道面のずれを説明可能にする。研究グループによると、火星に向かってらせん運動するフォボスの先祖と反対側にあったダイモスの原型は、重力の相互作用により火星やその環から離れた場所に移動した。その後軌道共鳴により、ダイモスの軌道周期はほかの衛星の3倍になったと新説は説明する。これがダイモスの公転軌道面がずれたシナリオだという。

■JAXAの火星衛星探査プロジェクトが新説を検証する

 研究グループが提唱した新説は将来検証可能になるという。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が計画する「火星衛星探査計画(MMX)」は、火星やその衛星の進化過程を明らかにするのが目的だ。2024年にはフォボスに探査機が送られ、サンプルを収集し再び地球に帰還するという。これが新説の検証の手掛かりになるとしている。

 今回の研究は、6月1~3日に開催された米天文学会の236回大会にて発表され、プレプリントサーバーarXivに1日にアップロードされた論文はAstrophysical Journal Lettersに掲載予定だ。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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