逆境の日本に忍び寄るハイパーインフレと悪い円安 後編

2020年5月25日 08:15

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 さて、「日本政府は国債を発行し、日本銀行がそれを買い受ける代わりに現金を渡す」という前編の文脈を見て、何かに気付いた人も多いのではなかろうか。そう、アベノミクスの延長上で、まさしくコロナ禍の現在も日本銀行が行っている政策なのである。しかも、「無期限」という青天井だ。

【前回は】逆境の日本に忍び寄るハイパーインフレと悪い円安 前編

 もっともハイパーインフレの可能性については、GNPの額の約40%もの国債を発行していた戦時下とは違うという理由で否定できる。現在の国債発行額はGDPの5%前後に過ぎない。

 ただし、まるで打ち出の小槌のように国債を発行して日銀が現金をバラマキ続けることは、コロナ禍の中では正しく感じられたとしても、借金を上積みしていることには違いなく、将来的に大きなリスクとなる可能性もあろう。

 では、どのようなリスクとなるのかといえば、例えば国債の償還期限に、日本政府が日銀に現金を返還できないというデフォルト(債務不履行)のリスクである。

 現金をばらまくことによって経済活動が加速化され、日本全体としての稼ぐ力が戻ってくれば良いのであるが、もし経済が停滞したまま、財政収支の赤字が拡大し、日本政府の債務残高が増加しただけであれば、アルゼンチンやギリシャのようにデフォルトになる可能性も否定はできないのだ。

 もちろん、先進国である日本がデフォルトすることなど、あり得ないと思われるであろうが、ここ数年見られなかった「悪い円安」については、特に注目しておくべきであろう。

 リーマンショックや米中貿易戦争など、世界の経済が停滞すると決まって投資家は安全資産としての日本円を購入するため、円高になるのが常であった。しかし、この未曾有のコロナ禍の中では、株価の急落を後目に極端な円高にはならず、むしろジワジワと円安になっているのである。これは、安全通貨であった日本円がもはや安全ではないと認知され始めているとも解釈できる。

 海外からのインバウンドに依存し、海外に生産拠点を移転し続けた結果サプライチェーンが途絶え、少子高齢化への打開策ともなりうるシェアリングエコノミーの推進ですら、コロナ禍によって方向転換をせざるを得なくなった日本はとてつもない逆境の下にいる。

 そんな日本において、日本政府と日銀が振り続ける打ち出の小槌が、ただのデフォルトリスクとして世界の投資家の目の写らないよう、しっかりとした出口戦略が必要であるといえよう。さもなければやってくるのは、「超円安」と「ハイパーインフレ」の可能性も否定できない。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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