遺伝子組み換え技術でナスに含まれるβカロテンを大幅増 大阪府立大の研究

2020年5月18日 17:36

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遺伝子組換でないナス(左)とGMナス(右)の断面写真(大阪府立大のホームページより)

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 大阪府立大学は14日、遺伝子組換え技術を使い、摂取後に体内でビタミンAに変換されるβカロテンの含有量が、普通のナスより約30倍多いナスの開発に成功したと発表した。遺伝子組換え技術により、農薬や害虫に強いナスが開発された例はあるが、ナスの栄養成分を改変する研究に成功したのは世界初という。成果は植物科学系の学術雑誌「Plant Cell Reports」に掲載された。

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 遺伝子組換え技術(GM)は、微生物など別の生物の遺伝子を入れることで、農薬や害虫に強い品種を作る。農作物を農薬や病気に強い品種にすることで、収穫量を増やし食料問題を解決するという利点もあり、開発途上国を中心に拡大。商業栽培が始まった1996年で170万haだったGM作物の作付面積は、農林水産省によると、2018年には26カ国で計1億9,170万haに上っており、世界人口の増大に比例して増加の一途を辿るとみられる。

 近年は遺伝子を切断などし改変する、ゲノム編集という類似の新技術が台頭してきており、GMを含む食品の遺伝的改良法は今後も進歩するとの見方が強い。だが先進国では、他の生物の遺伝子が入るため安全性に対する不安が依然として根強い。日本も、消費者庁の調査(2017年)でGM食品に「不安がある」との回答が約4割に上るなど、マイナスイメージが先行する。

 GM食品に対する悪印象の影響力は大きく、分子育種学の領域では、研究者からGMの国内研究開発の衰退を危惧する声が上がる。そこで、大阪府立大のグループは、GMの有効性を示して懸念を払拭するため、栄養価を高めた農作物を作出する研究に取り組むことにした。

 研究対象に選んだのは、栄養に乏しいとされるナス。研究グループは、ニンジンに含まれるβカロテンが多いナスが出来れば、GMの実用性をより説得感がある形で証明できると考えた。また、ナスが栽培されるアジアやアフリカの途上国では、失明や免疫不全を誘引するビタミンA欠乏症が問題化しており、今回の研究をビタミンA欠乏症の改善策とも定義した。

 研究は、βカロテンの合成に関わるフィトエン合成酵素遺伝子を組み込んだ細菌をナスに導入し、遺伝子変異を起こしたナス(GMナス)に含まれるβカロテンが増大するかを検討した。すると、GMナスは、遺伝子を組換えていないナスと比べて約30倍のβカロテンが含まれていることが確認された。

 グループでは、研究によるβカロテンの含有量は、ビタミンA欠乏症の改善に十分な量ではないものの、「今後の技術改良でより多くのβカロテンを含むナスを開発できる」と説明。さらに、GMナスがβカロテンを多く蓄積する仕組みを解明できれば、「将来的にゲノム編集などの技術でもβカロテンが多いナスを開発できる」としている。(記事:小村海・記事一覧を見る

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