富士フイルム、米国でアビガンの臨床試験開始 コロナに有効か確認へ

2020年4月10日 15:06

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「アビガン」の作用メカニズム。(画像: 富士フイルムの発表資料より)

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 富士フイルムは9日、抗インフルエンザ薬「アビガン」に関して、新型コロナウイルスの患者を対象とした臨床試験を米国で行うと発表した。いまだ有効な治療法が確立されていない新型コロナウイルス感染症の感染者に投与し、治療効果や投与の安全性を確認することが狙いだ。

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 「アビガン」は、富士フイルムの子会社である富士フイルム富山化学が開発したインフルエンザ治療薬で、ファビピラビルという呼称でも知られる。2014年3月に国内での承認を得た。

 一般的に知られている治療薬とは異なり、インフルエンザ等の感染症が蔓延したときの備えとして国が備蓄している。既存の一般の治療薬では感染拡大を防止できないと懸念された場合に、国の判断によって使用の可否が検討される。市場には流通しておらず、一般に処方されることはない。

 現在世界的に流行が続いている新型コロナウイルスは、インフルエンザウイルスと同じくRNAウイルスに分類される。「アビガン」は、インフルエンザウイルスが体内で増殖することを防ぐが、この効果が新型コロナウイルスについても働くかどうかがポイントとなる。

 すでに治療効果を認める声も出ており、中国は新型コロナウイルス感染症に対して「アビガン」が有効となる可能性を早い段階で公表していた。また、感染の広がるドイツでも、4月に入り「アビガン」を大量に調達する動きがある。

 米国の臨床試験は、ブリガム・アンド・ウイメンズ病院、マサチューセッツ総合病院、マサチューセッツ州立大学メディカルスクールの3施設で実施される予定。発表によると、まずは数十例の患者が投与の対象となる。

 米国に先立って、国内ではすでに3月から新型コロナウイルス感染症患者を対象とした「アビガン」の臨床実験が行われている。世界的な感染拡大に歯止めがかからない中、治療法の早期の確立を目指して米国でも臨床試験を実施する流れとなった。

 日本政府も、海外に対する「アビガン」の供与を進めている。すでに、国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)を通じて、インドネシアやトルコなど20カ国に無償提供を行うことを発表。また、ほかにも約30カ国と供与に向けて調整している。

 アジアやアフリカの貧困国で感染がさらに拡大した場合、より甚大な被害がもたらされることを懸念した人道支援としての面もあるが、同時に、できるだけ早期に多くの臨床データを収集することで実用化の検討を急ぐ狙いもある。

 国際的な需要の高まりを受け、製造元の富士フイルム富山化学では「アビガン」の増産体制の整備が進められている。副作用も認められるため妊婦等への使用はできず、また、治療効果に疑問を呈す声もあり、過度な期待は禁物だ。一方で症状改善に効果が見られるという報告も一定数あり、今後の臨床試験の結果が待たれる。(記事:万嶋せら・記事一覧を見る

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