銀行の常識は社会の非常識! (5) 銀行の振込手数料が変わるか?

2020年2月22日 10:36

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 公正取引委員会が銀行の振込手数料に、大きな疑問を持っているようだ。銀行の3大機能とは、「金融を仲介すること、信用を創造することと、決済機能」である。言い方を変えると、預金と融資に為替ということになる。

【前回は】銀行の常識は社会の非常識か? その4 振込手数料は高すぎないか

 現在の銀行経営に預金と融資が果たす役割は、著しく低下している。超金融緩和の時代にあって、適切な利ザヤを確保して融資できることはほとんどない。融資機会が限られているため、預金を集めるモチベーションも湧いてこない。銀行に認められた3大業務のうち、2つが機能不全状態にある。

 ますます深刻化する銀行経営だが、ある時期、収入拡大の可能性を感じさせたのが手数料だ。

 今まで扱ってこなかった投資信託等金融商品の販売窓口に、銀行が名乗りを上げたのが2001年、手数料収入の拡大を目指してから足掛け20年の年月が経過している。もっとも、建前は資産運用としながらも、銀行の本音は手数料収入の拡大にあるわけだから、顧客の期待と銀行の思惑とのすれ違いは、様々な局面で表面化していた。

 両替商が銀行の始まりだからと考えて、手数料徴収を逡巡していた両替業務も、数量によって手数料が徴収されるようになった。人手を煩わせないように両替機を使っても、当たり前のように手数料を徴収される。

 銀行によっては、窓口で100円硬貨3枚を10円硬貨30枚に両替すると、330円の手数料がかかる。額面は関係ないため、10円硬貨3枚を1円硬貨30枚に両替しても同一の取扱いとなる。どうにも強引さは拭えない。

 銀行は今、鵜の目鷹の目で、手数料が取れる業務分野を探している。

 18年7月、コンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)傘下の東日本銀行では、対象の取引が不明確な融資手数料であるとして、金融庁から業務改善命令を受けた。利益を上げるために、なりふり構わず手数料の口実を探すほど、銀行は苦しんでいる。

 中には、金種指定支払手数料を編み出した銀行もある。支払金額に金種の指定があって、硬貨の枚数が2001枚以上だと2200円の手数料がかかる。給料の現金支払いに拘っていたら、高額の手数料を支払う羽目になっていたかも知れない。

 今回公正取引委員会が問題視しているのは、銀行間の振込手数料が半世紀近く変わっていないことだ。

 銀行は日本国内の金融機関相互の内国為替取引を迅速かつ円滑に進めるため、全国銀行データ通信システム(全銀システム)を1973年に開始した。2019年11月に行われた設備増強とシステム更新によって、第7次の全銀システムへと衣替えしたことになる。開始当時は平日日中の即時振込を可能にした、世界初のシステムである。

 銀行は規模の大小によって、取扱う業務量も大きく違う。その相違を均すための方便として、資金を送る側の銀行が資金を受け取る側の銀行に、手数料を支払うことになっている。「お手数をかけます」という意味合いの銀行間手数料は1件当たり、3万円以上の送金で162円、3万円未満の場合は117円だ。

 銀行の理屈としては、顧客から徴収する振込手数料にはこの銀行間手数料に、受付銀行の手数料と、全銀システムの運営に係わる分担金が、含まれているということになっている。

 銀行が顧客から徴収する振込手数料には、振込金額や仕向け先銀行の違いによって、概ね110円から990円までの幅がある。

 東京都内から最小サイズの小包をヤマト運輸から送る場合には、北は宮城県から南は三重県まで930円である。郵便局のレターパックではサイズによって、370円~520円で全国どこにでも送れる。

 現金を送る場合と雑貨物を送る場合とを同列で論じるのは適切でないが、現金は通信システムを介在してキーのタッチで送れるのに対して、雑貨物は人から人へ手渡されトラックで運ばれたうえに受取人に届けられるという膨大な手間がかかっている。雑貨物と言っても途中紛失が許されないのは現金と変わらない。どうにもバランスが取れない、と感じる人は少なくない筈だ。

 今回公正取引委員会が問題にしているのは、振込手数料の根幹部分を占める銀行間の手数料だ。一般的には、990円(他行宛て・3万円以上・うち90円は消費税)の手数料のうち、162円の見直しで終わるようであれば片手落ちだろう。

 どうやら銀行にとって、今年は相当暑苦しい夏を迎えることになりそうだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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