観測可能な宇宙で生命存在は地球だけ 東大が生命誕生のシナリオを作成

2020年2月7日 16:43

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生命の発生に必要な最小のRNAの長さと、非生物的な過程でこのRNAが誕生するのに必要な星の数との関係(画像:東京大学の発表資料より)

生命の発生に必要な最小のRNAの長さと、非生物的な過程でこのRNAが誕生するのに必要な星の数との関係(画像:東京大学の発表資料より)[写真拡大]

 地球以外の惑星に生命が存在するかや、生命がどのように誕生したかは、科学にとって大きな謎のひとつだ。東京大学は3日、宇宙で非生物的な過程で生命が誕生したシナリオを作成したと発表した。シナリオによると、観測可能な宇宙空間で生命をもつ星は地球だけだという。

【こちらも】東工大など、生命誕生に関する新たな仮説を提唱

■ランダムに生命の起源が誕生する可能性
 生命における遺伝情報の伝達は、DNAやRNA、タンパク質によって行われる。このメカニズムの起源として有力な説のひとつとして、「RNAワールド仮説」が唱えられている。

 RNAワールド仮説によると、遺伝情報を担うDNAと代謝の役割を担うタンパク質の両方の機能をRNAが有し、遺伝情報が自己複製できるRNAで満たされた世界が存在したという。

 しかし自己複製可能なRNAがどう誕生したかについては、謎が残る。DNAやRNAの基本単位である「ヌクレオチド」が連なる順番により、生命活動が可能かどうかが決まる。

 仮にヌクレオチドが、ランダムに結合する化学反応をしたとしても、生命活動が可能となる情報をもったRNAが誕生する確率は、相当低いと考えられてきた。また未知のメカニズムによりこうしたRNAへと進化したとする説も存在するが、具体的なシナリオは未発見だという。

■広大すぎる宇宙
 研究を推進した東京大学の戸谷友則教授が着目したのが、宇宙の広さだ。最新の宇宙論によると、宇宙は観測可能な距離を超えて拡がっており、観測可能である130億年の領域に対し10の78乗以上もの体積をもつはずだという。10の178乗個もの星が存在する可能性があると推定され、宇宙のどこかで生命の起源となるRNAが誕生できると予想される。

 戸谷教授は、原始の地球型惑星において生命の起源となるRNAが誕生する確率と、宇宙に存在する星の数とを結びつける方程式を立てた。この方程式によると、10の40乗個の星が存在すれば生命の起源となるRNAが誕生可能だという。

 このシナリオでは、生命の起源となるRNAが原始の地球型惑星で誕生し、知的生命体まで進化したことは考慮されていない。また、生命を育む惑星は観測可能な宇宙のなかでは地球ただひとつであることも判明している。ただし未知のプロセスで効率よくRNAが生成されれば、太陽系外惑星にも生命が存在する可能性は否定できないとしている。

 研究の詳細は、国際学術誌Scientific Reportsにて3日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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