「先に要件を言わないコミュニケーション」の不快

2020年1月27日 19:01

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 友人や知人から、要件を言われずに「明日時間ある?」などと先に予定を聞かれた経験は、多くの人にあると思いますが、あまり快く思わない人も多いと思います。
 私も同じで、そういう時は必ず「なんで?」「何がある?」と聞き返すことにしていますが、それは要件を聞かなければ、そのことに充てる時間があるかないかの判断ができないからです。
 仮に「予定が入っていない」としても、それも含めて自分の予定であり、その空いている時間をどう使うかは要件次第です。

 「要件を言わない電話」もあります。明らかな営業電話は放っておけば良いですが、そうではない友人や知人からのものもあります。そういう人から伝言メッセージで、「折り返してください」などと言われることがありますが、私は相手によって対応を変えます。

 日頃からメールやチャットなど使い分けて、適切なコミュニケーションをとっているような人からこんな電話が来たとしたら、よほど何かがあったのかと思って折り返します。
 反対に、いつも要件を言わない電話ばかりしてくるような人の話は、だいたいがメールで済むことか、一方的な頼みごとか、私にとって面倒なことのいずれかです。そんな時は、ショートメールなど電話以外の手段で要件を確認して、「そういう話ならメールして」などと伝えます。

 そもそもこういう人は、ほとんどが口頭か電話でのコミュニケーションです。要件が具体的でない、口で言いくるめたい、事前に言うと断られそうなど、メールやチャットなどの文字にしづらい事情があるからです。
 こういう相手のペースに合わせると、長々と話されたりして余計な時間を取られるので、ちょっと冷たかったり失礼だったりするかもしれませんが、私はできるだけ後回しにするか放置します。

 困るのは仕事の中で、特にマネージャークラスの人にこういうスタイルの人がいる場合です。
 上司から「ちょっといい?」「いま時間ある?」などと投げかけられると、部下としては対応せざるを得ないことが多いでしょうが、その要件が自分にとってはあまり重要ではない会議だったり、こちらの業務状況を考えていない指示命令だったりします。
 定時間際の急な業務指示、「とりあえず話そう」という結論のない打ち合わせなども、先に要件がわかれば回避できることがたくさんあります。こういう上司の行動が、実は企業の生産性を下げる多くの要因となっています。

 「先に要件を言わないコミュニケーション」をしてくる人に共通するのは、「相手の事情への配慮が薄い人」ということです。

 例えば、何でも電話してくる人を批判的に「電話野郎」などと言い、それは「電話は相手の時間を奪う行為」という批判ですが、これに対する反論を聞くと、「電話の方が早い」「直接話す方が伝わりやすい」などと言います。
 電話というコミュニケーションツールは、絶対に必要な場面があるとしても、「電話の方が早い」「直接話す方が伝わる」という反論には、相手がそれを望んでいるかという視点がなく、電話する側の一方的な考えでしかありません。

 今は様々なコミュニケーションツールがあり、仕事ができる人ほどそのツールを場面に応じて適切に使い分けています。
 私がやり取りしている中では、年齢が上の人ほど「とりあえず電話」をはじめとして、コミュニケーションツールの使い方に偏りがあり、面倒に感じることが多々あります。もっと使い分けを身につけなければダメだと思います。

 コミュニケーションはお互いに必要な情報のやり取りであり、「良いコミュニケーション」は、どちらかの一方的な都合では成り立たないものです。
 「まず要件から伝えること」は、そのための大事な条件です。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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