筋ジスに合併する心筋症発症の仕組み解明 新たな治療法開発に期待 岡山大など

2019年12月24日 06:50

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筋ジストロフィー心筋症でみられる収縮軸に沿った微小管の過重合(画像: 神戸大学資料より)

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  • 今回の研究の概要。

 岡山大学らの研究グループは17日、筋ジストロフィーに合併する心筋症発症の仕組みを解明し、心機能を改善する治療薬候補を開発したことを発表した。今後、筋ジストロフィーの新たな治療法の開発や、その他の心不全、骨格筋の疾患の研究に結びついていくことが期待できる。

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 研究に参加しているのは、岡山大学大学院の片野坂友紀講師と氏原嘉洋博士、神戸大学大学院の金川基講師および川崎医科大学の研究グループ。福山型筋ジストロフィーの原因遺伝子であるフクチンを欠損した疾患モデルマウスを作成したところ、マウスは重い心不全を起こした。これらの症状は細胞骨格の一つである微小管の過重合(過剰につながっていく)が原因であり、コルヒチンを与えることでマウスの寿命が延ばせることを明らかにした。

 研究の成果は17日、総合科学雑誌「Nature Communications」電子版に掲載された。

 筋ジストロフィーは、骨格筋が壊死と再生を繰り返すことで骨格筋が障害されていき、徐々に運動機能が低下していく疾患である。体中の筋肉にも影響するため、合併症として呼吸や心筋、嚥下、消化器の機能などにも症状が現れる。

 中でも心筋症は特に生命にかかわる合併症だ。近年では心臓保護作用を持つ薬剤による治療も行われるようになっているが、進行していけば心臓移植のみが治療法となることもある。

 筋肉の細胞は常に伸縮するため負荷がかかっている。しかし筋肉の細胞膜を構成するタンパク質の糖鎖が、細胞外マトリックスと結合することで安定し強度を保つことができる。日本で2番目に多い筋ジストロフィーである福山型先天性筋ジストロフィーは、糖鎖合成にかかわるフクチン遺伝子が欠損していることが知られている。フクチン遺伝子が働かないと、筋細胞表面にあるジストログリカンというタンパク質の糖鎖に異常がおき、筋細胞が壊死してしまう。

 研究グループは、フクチン遺伝子を欠損したノックアウトマウスを作成。このマウスは正常な糖鎖の合成が行えず、心機能が低下しているという特徴を持っていた。つまり、世界初の福山型筋ジストロフィーの疾患モデルである。このマウスについて調べたところ、細胞が形態を維持するのに重要な細胞骨格の一つである微小管が、異常な過重合を起こし筋細胞の収縮をさまたげていた。

 次にフクチンノックアウトマウスに、コルヒチンという薬剤を与えた。コルヒチンとは、イヌサフランという植物から得られる化合物の一種であり、リウマチや痛風の治療に医薬品として用いられている。微小管の重合を阻害して細胞分裂を抑制するほか、好中球の分裂を抑えることで抗炎症作用を現す。

 フクチンノックアウトマウスの筋細胞の過重合した微小管は、コルヒチンを与えられると分解され心筋の収縮能力は改善、心機能が改善し寿命も伸びた。

 これらのことより、フクチン遺伝子欠損による筋ジストロフィー症状の原因は、糖鎖不全による細胞外マトリックスとの結合不全から起こるものだけでなく、微小管の異常による細胞内骨格不全も影響していることがわかった。そしてコルヒチンにより、筋ジストロフィー症状が改善されることも判明したのだ。

 本研究により、これまで不明だった福山型筋ジストロフィー発症のメカニズムと、新たな治療法や薬剤が明らかになった。今後、福山型だけでない筋ジストロフィー、さらにはその他の原因がわかっていない心筋症の治療法開発にも生かされていくことが期待できる。(記事:室園美映子・記事一覧を見る

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