「人が人を評価すること」はどこまで必要か

2019年12月19日 18:26

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 どこの会社でも当たり前に行われている評価制度ですが、最近は本当にこれの意味はあるのかという疑問の声が多々あります。
 その結果として、成果主義の見直しがあったり、評価制度そのものをやめたりする企業も出てきています。大きな動きは、外資系企業をはじめとした「ノーレイティング」といったものです。序列付けの年次評価をやめて、その労力をもっと個人面談などに振り向けて、一人一人の能力伸長につなげようという主旨です。

 そもそもなぜ評価制度が必要なのかを考えると、「自分の身の程を知るため」と、「給料を決めるため」です。「身の程を知る」というのは、他人からの評価で自分の能力を客観視して、そこから課題を見つけたり、目標を立てたりするという意味です。評価制度の中では「フィードバック」などと言われるものです。

 評価制度で常に課題になるのは、「評価基準」についてです。
 評価には評価する者による個人差があり、100%同じ尺度での公正な評価というものはあり得ません。これはどんなに基準を設けても、評価者がどんなに熟練しても、差は絶対にあります。

 フィギュアスケートのプロフェッショナルな審判であっても、それがまったく同じ演技を見た結果であっても、採点には差が出ます。「こういう演技をします」とわかっていても、差は出てしまうのです。
 差が出ることが前提にあるので、複数の審判で採点したり、最高点と最低点を除外したりして、より公正になるように調整する仕組みがあります。必ず試合の事前と事後にミーティングをして、常に判定の目線合わせをしていると聞いたこともあります。

 一方で、会社の評価制度は、それぞれの評価者から、それなりのきちんとした評価があがってくることを前提にしています。二次評価のように調整する仕組みはありますが、もともとの評価者は一人なので、極端なずれがあると修正することが難しくなります。
 私はまだ見たことがありませんが、気に入らない部下を上司が徹底的に低く評価するなんていうことは、やろうとすればできてしまいます。「そんな評価ではないだろう」と調整しようとしても、評価した上司が強く主張し続けたとしたら、それを覆すことはかなり難しいです。調整する二次評価者は、その部下の仕事ぶりを、直接観察していないことがほとんどだからです。


 私が思うのは、多くの人が割と簡単に「評価する」と言いますが、人が人を評価するということは、実はかなりの危うさを含んでいるということです。相当な真剣さでやらなければ、おかしなことが起こる可能性があります。
 どんなに厳密な基準を用意しても、必ず主観による格差が出ます。はっきり言って公正な評価は無理なのです。

 ある記事で最近見た言葉で、「人が人に値段をつける仕組みは絶対に不満が出る」「人を支配で動かせる時代は終わった」というものがありました。「会社の民主化」という動きだそうです。

 確かに最近の給与の決め方の中には、自分の言い値を周りがOKすれば良いとか、転職者の市場価格を基準に決めるとか、ちょっと違う考え方が出てきています。
 評価制度に「給料を決める」という役割がなくなったとすると、あとに残るのは「身の程を知る」ということですが、これは別に評価表で点数にしなくてもできることです。フィードバック面談を重視するような流れも、こんなところから生まれています。

 その方向性はともかく、これから会社の人事評価の仕組みは間違いなく変わっていきます。
 少なくとも、「人が人を評価することの難しさ」は十分理解しておかなければなりません。

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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