中国地方で出土した縄文後期の赤色顔料、北海道産だった 理研らの研究

2019年12月1日 08:15

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奈良県大和水銀鉱山で採掘された辰砂鉱石 古代日本より赤色顔料の朱として広く用いられた(写真:理化学研究所の発表資料より)

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 宇宙科学や地質学等の分野で年代測定に用いられる元素の同位体。理化学研究所(理研)は11月26日、島根県出雲市の京田遺跡から出土した赤色顔料の産地を、硫黄の同位体比を分析することで明らかにしたと、発表した。北海道産の鉱石が用いられており、縄文時代後期に流通ネットワークが存在したことが示唆されるという。

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■産地を推定可能にする硫黄同位体

 われわれの体を含め、あらゆる物質を構成するのが元素だ。中性子の数が異なる同位体が、各元素にいくつか存在しており、同位体がどの割合で存在するかを示す同位体比には、過去を知る有力な情報が含まれている。地質学の分野では、炭素の同位体比を調べることで、化石の正確な年代が測定される。

 考古学の分野でも同位体比の測定が役立つという。鮮やかな赤色をした硫化水銀は、金属顔料として壁画や土器の装飾など古代日本で使用されてきた。「朱」とも呼ばれる硫化水銀は、辰砂(しんしゃ)鉱石から赤色部分のみを集めた顔料で、日本や中国などに多数の産地をもつ。朱は縄文時代から利用されたと考えられ、産地を知ることで流通経路や古代日本社会の情報が明らかになるという。

 理研と近畿大学の研究者から構成されるグループが着目したのが、硫黄の同位体比だ。自然界に存在する4種の硫黄同位体のうち、質量数32と34の硫黄が大半を占める。そのうち質量数34のものはほとんど変わらないため、質量数32の硫黄同位体の割合を調べることで、産地が特定できるという。ただし考古学に応用するためには、壁画や土器など試料を採取する対象物を傷つけないことや高感度で硫黄同位体比の測定をすることが必要となる。

■高感度で測定可能な同位体比

 研究グループは、硫黄化合物を燃焼させてできた硫黄酸化物から発生した二酸化硫黄ガスを、ガスクロマトグラフィーで窒素と二酸化炭素に分離したのち、質量分析計で同位体比の測定に成功した。従来の100分の1程度の0.5マイクログラムでも、朱の硫黄同位体比が測定可能だという。

 この手法により、縄文時代後期(約3,500年前)の大規模集落跡・京田遺跡から出土した遺物を分析した結果、朱の原料となる辰砂鉱石は北海道産である可能性が高いことが判明した。物資の流通ネットワークが縄文時代後期には存在していたことを示すという。

 研究グループによると、朱そのものが本土にもち込まれて採色されたのか、現地で彩色されて本土にもち込まれたかについては不明で、今後さらなる分析が待たれるという。また、硫黄だけでなく窒素や鉛などの同位体分析の高感度化を実現し、宇宙、原子核などの分野への応用を目指すとしている。

 研究の詳細は、欧州科学誌Journal of Archaeological Science: Reportsオンライン版にて11月4日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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