大マゼラン雲の観測で大質量星形成の謎を解明 アルマ望遠鏡

2019年11月19日 20:56

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アルマ望遠鏡で撮影された2つの分子雲の疑似カラー合成図。赤色と緑色がそれぞれ、速度が異なる一酸化炭素の同位体分子13COからの電波を表す。左図の青色はハッブル宇宙望遠鏡により観測された水素電離ガスの分布を示し、右図の青色は波長1.3ミリメートル帯の濃いガスに含まれる塵からの電波を示す。2領域とも、フィラメントが集合している「かなめ」(図で青色に示している部分)の位置に大質量星が存在する。(c) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/Fukui et al./Tokuda et al./NASA-ESA Hubble Space Telescope)

アルマ望遠鏡で撮影された2つの分子雲の疑似カラー合成図。赤色と緑色がそれぞれ、速度が異なる一酸化炭素の同位体分子13COからの電波を表す。左図の青色はハッブル宇宙望遠鏡により観測された水素電離ガスの分布を示し、右図の青色は波長1.3ミリメートル帯の濃いガスに含まれる塵からの電波を示す。2領域とも、フィラメントが集合している「かなめ」(図で青色に示している部分)の位置に大質量星が存在する。(c) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/Fukui et al./Tokuda et al./NASA-ESA Hubble Space Telescope) [写真拡大]

 名古屋大学などの研究チームは14日、大マゼラン雲をアルマ望遠鏡で観測した結果、大質量星形成の現場を捉えたことを発表した。

【こちらも】天の川銀河を公転する大マゼラン雲からプラズマの噴射を発見 欧州南天天文台

 大質量星は数としては恒星全体の0.1%以下と少ないが、その一つ一つは非常に明るく、光度としては全体の90%を占める重要な天体である。

■マゼラン雲

 「大マゼラン雲」と「小マゼラン雲」は南半球で見える大きな不規則銀河である。見かけが雲のように見えるため「マゼラン雲」と呼ばれているが実態は銀河である。大マゼラン雲は地球から16万光年、小マゼラン雲は20万光年の距離にあり、どちらも銀河系の近接銀河である。

 大マゼラン雲は銀河の中では非常に近くにあるため、銀河を構成する星雲や星団が沢山見える。その中でも毒グモ星雲(タランチュラ星雲)は巨大な散光星雲で、その中心部の星形成領域では、星雲から誕生したばかりの若い星が青白く輝いている。

 銀河系内の星形成領域としてはオリオン座のM42が有名だが、毒グモ星雲の直径はM42の30倍以上もある。そのため太陽質量の100倍にもなる大質量星も生み出している。

 小マゼラン雲は視線方向に異常に細長い姿をしている。これは、大マゼラン銀河によって細長く引き伸ばされたととも、2つに引き裂かれたとも言われている。

■大質量星の形成過程

 星は水素ガスが集まった分子雲からできる。分子雲が重力によって収縮することによって原始星(星の赤ちゃん)が誕生する。太陽程度の質量の星については、原始星が重力によって収縮する力と内部の放射による圧力が釣り合っているが、大質量性の場合は、放射の圧力が大きくなりすぎてガスが吹き飛ばられてしまうと考えられてきた。

 大質量星をつくるには、直径1光年の空間に太陽質量の60倍のガスを詰めこむ必要がある。そのしくみが明らかになっていなかった。

■今回の研究

 国際研究チームは、アルマ望遠鏡で大マゼラン雲の中にある毒グモ星雲の星形成領域を観測した。その結果、大質量星を中心扇形に広がる細い繊維状の分子雲の存在を確認した。これはガス雲同士の衝突をコンピュータシミュレーションで計算した結果と高い精度で一致している。

 この結果から2つのマゼラン雲が接近した際、星間雲が衝突し大質量星が形成されたと結論づけられた。これは、大質量星が誕生する過程を解明する重要な研究成果である。(記事:創造情報研究所・記事一覧を見る

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