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生命誕生の謎に迫る DNAなど構成する核酸塩基を擬似宇宙空間で再現 北大など
DNAやRNA等の核酸の最小単位であるヌクレオチド(左)と今回再現された核酸塩基6種(右)(写真:北海道大学の発表資料より)[写真拡大]
地球上の生命の起源とも考えられる星間分子雲。北海道大学は9月30日、実験室で宇宙空間を再現し、光化学反応により遺伝子を構成する核酸塩基が生成可能であることを確認したと、発表した。
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■多数の分子が検出される星間分子雲
ビッグバンののち宇宙が進化する過程で複雑な元素が発生し、生命の誕生へとつながったと予想される。有機化合物等が含まれる隕石(炭素質コンドライト)は生命の起源と考えられるため、隕石や小惑星から有機化合物等をサンプリングする試みが実施されている。
炭素質コンドライトから、DNAやRNAといった遺伝子の最小単位(ヌクレオチド)に含まれる核酸塩基が発見されたことで、地球上で生命が誕生する以前から宇宙空間での有機化合物の生成が示唆されている。
「星間分子雲」と呼ばれる、水素分子のガスと氷の微粒子から構成される場所では、紫外線や宇宙線等の放射線により、化学反応が活発に起きることが知られている。これまで、星間分子雲を構成する塵に光を照射するだけで複雑な有機化合物が発生可能かどうかは、研究対象になっていた。だが、ヌクレオチドに含まれる糖やリン酸といった有機化合物が星間分子雲を模した環境で再現可能だったものの、核酸塩基の再現はこれまで実施されなかった。
■炭素質コンドライトの起源の可能性
北海道大学、海洋研究開発機構、九州大学の研究者から構成されるグループは、星間分子雲の環境を実験装置内で実現し、水やメタノール、一酸化炭素やアンモニアを主成分にもつ氷の微粒子に紫外線を照射する実験を実施した。その結果、核酸塩基7種のうち、グアニンを除くアデニン、シトシン、チミンなど6種の生成が確認された。
今回の研究により、マイナス263度という極低温の環境であっても、光化学反応によって核酸塩基が生成可能であることが明らかになった。またタンパク質の材料となるアミノ酸も検出され、炭素質コンドライトで検出された核酸塩基とアミノ酸の割合とが一致したことから、炭素質コンドライトが星間分子雲に起源をもつ可能性があることが判明した。
炭素質コンドライトに含まれる有機化合物の起源を解明することは、地球上の生命の起源を理解するのに不可欠だ。今後、核酸塩基等の有機化合物がどの程度地球上の生命誕生に貢献したか、生命が誕生した契機となった事象等の疑問解決につながるだろうと、研究グループは期待を寄せている。
研究の詳細は、Nature Communication誌にて9月27日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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