楽天の基地局設置が遅れている 総務省の焦りは楽天に伝わっているのか?

2019年9月1日 08:00

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 10月に華々しく携帯電話事業に参入する筈の、楽天モバイルが冴えない。楽天モバイルは19年度末までに東京と大阪、名古屋を主体に3432局の基地局を整備する計画だ。総務省はその計画に基づいて、18年4月に楽天モバイルに電波を割り当てた。自社で整備する上記以外の地域は、当面KDDIの通信設備を借用する。

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 問題は、自社で整備するとしていた大都市圏の基地局工事が、計画通りに進んでいないことだ。

 総務省が7月に工事の迅速化を求めた際には、楽天モバイルが工事の遅れを取り戻すための計画を7月末に提出。8月には、用地確保や工程管理を厳密にするための対応策を提示した。

 総務省の懸念に対して、楽天の三木谷浩史会長兼社長は8月8日に開催された19年1~6月期の決算会見で、「サービスは段階的に拡大し、10月のサービス開始時には利用者と機能を限定したスモールローンチで始める」と述べた。利用者の数や制限方法については9月までに詰めるということだったので、間もなく公表される筈だ。

 楽天モバイルが携帯電話事業に参入すると公表した時点で話題になったのは、6000億円という極めて抑制された投資金額と、通話料金がどの程度引き下げられるかであった。投資金額が抑制されているのは、完全に仮想化されたクラウドネットワークを構築する効果だと伝えられた。世界で過去に例のない、全く新しい夢のようなシステムであり、実現を疑問視する声も少なくなかったが、三木谷会長は「社内の実証実験で問題ない」と自信を見せていた。

 会見で三木谷会長は「基地局の整備は10月に完全に間に合う」と不安視する質問を一蹴している。”完全”の前提が不明であるため部外者が雑音を入れる余地はないが、三木谷会長の胸の内では辻褄が合っているのだろう。

 現場では、工事を行う前段の交渉や調整、迫りつつある東京五輪関連工事との施工業者の取り合いもある。会長とその胸中を忖度する現場との間に、微妙な認識にズレが生じていないとは言い切れないだろう。

 総務省は再三に渡って、楽天モバイルに対し工事の進捗を促している。総務省がしびれを切らしていることを承知した上で、三木谷会長は「新しいネットワークなので、念を入れる必要がある」と発言している。楽天の社内で想定している本音の基地局数は概ね予定通りに確保されているのかも知れないが、総務省に提出した公式の計画との間に、大きな乖離が生じているを見るのが自然だ。

 あまりにもこじんまりとしたスタートで、通信品質が先行3社に大幅に劣後するようなショボい状況であれば、楽天に寄せられた官民の期待は一気に萎んでしまう。楽天の企業イメージを毀損しかねないという懸念を感じるのは、まさに楽天が正念場に直面していることを示すものだ。

 東証の株価も、6月25日に記録した1313円をピークに下落一方となり、8月29日の終値が954円、30日の終値が1001円と、投資家の戸惑いを正直に反映して振れ幅の大きい展開を見せている。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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