「なぜできない?」と聞くのはイジメと同じ

2019年8月29日 17:39

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 以前も同じことを書いたことがありますが、やっぱり今でもよく目にしてしまうので、また書いてみます。

 ある会社での上司と部下の面談ですが、上司は「なぜできないのか?」と部下に聞いています。決して威圧的ではなく、「どうしたらできると思う?」などとも聞いていて、部下が自分なりにできる方法を一緒に見つけ出してあげようと、一生懸命指導しているのだと思います。

 ただ、どんなにやさしく言ったとしても、「なぜできない?」はやっぱり相手を責める言葉であることに変わりはありません。
 この「なぜできない?」の理由が「できる能力があるのにサボっていた」としたら、本人を叱責する意味で聞いても良い場合はあるでしょう。
 しかし、「その時点で能力が足りていないこと」が理由だとしたら、その投げかけはイジメでしかありません。そのことを達成するための能力が足りないのであれば、どんなに考えても「できないものはできない」のです。「なぜできない?」と聞いても解決策は何もありません。
 上の立場の者が、解決策がないことがわかっているのに、部下に対して責め言葉を投げかけているとしたら、それがイジメになってしまうというのは理解していただけるでしょう。

 例えば、足が不自由だとわかる人に、「なぜもっと早く歩けないのか」とは普通は言いません。そのための能力がないことが、見た目ですぐに判断できるからです。
 たぶん「どのくらいの早さなら歩けるのか」「坂道やでこぼこ道はどうなのか」など、歩く能力のレベルを測り、それに見合った対応をするでしょう。

 これは仕事の能力でも同じです。ただし違うのは、「仕事の能力は見た目では判断しづらい」ということです。判断基準が自分や周りの誰かとの比較になり、その人なりの能力を客観的に見なくなります。
 そうなると、「このくらいはできて当然」と、能力に対して過剰な仕事を与えているかもしれず、それがこなせないと「なぜできない?」となってしまいますが、それは本来「できない仕事をやらせたこと」に問題があります。

 ある先輩社長から言われたことですが、「能力不足を責めるのはイジメと同じこと」です。
 「なぜできない?」は、やはりどこかに相手を責めるニュアンスがあります。能力がある日突然伸びることはめったにありません。
 他人の能力を見極めるのは難しいことですが、「その人ができること」を過少でも過剰でもなく、できる限り見ようとする努力が必要だと思います。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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