「退職代行サービス」を繁盛させてしまう会社側の責任

2019年8月15日 17:48

小

中

大

印刷

 「退職代行サービス」の話を、いろいろな企業の人事担当からときどき聞くようになりました。
 「うちの会社にもついに来た」などという話を最近聞きましたが、実際にその需要は急増しているようです。手数料は5万円ほど、利用者は20代男性が多いようですが、ある記事によれば、「最近はリピーターが目立ってきている」といいます。
 企業側が退職に難色を示して、様々な引き留めをするケースが増えているのか、それとも社員側が「直接言うのが面倒」などの理由で、業者に依頼するハードルが低くなっているのか、はっきりした状況はつかみきれていないようです。

【こちらも】一考察 広がる代行業への大いなる疑問

 この「退職代行サービス」の存在は、会社の立場からすると、あまりうれしいものではありません。やはり直接理由は聞きたいし、よほどの問題社員でもない限り、引き留め的な話はしたいでしょう。
 また、もし私自身が会社を辞めるときに、このサービスを使うかといえば、絶対に使うことはありません。辞めるとなれば、やはり円満退職にしたいので、自分の口から伝えるべきだと思いますし、仮にどんなに恫喝されても、強い引き留めにあっても、自分の意思を通す自信があるからです。もちろん、どんな辞め方でも、最終的には本人の意思が優先される法的な裏付けも知っています。

 ただ、こういうサービスに頼らなければ、簡単には辞められないケースがあるのは確かです。
 パワハラにあって、そんな上司とはもう二度と話したくないなど、社員が会社への信頼を失っている場合や、心身の調子を崩していて自分では対処できないような、やむを得ない事情があります。
 そうでなくても、代わるがわるいろんな人から同じような引き留めを受けたり、退職届がいつまでも受理されないような時間稼ぎにあったり、次の転職先が決まっていればなおさら、会社側のそういう対応は本当に面倒です。第三者を通して早く処理できれば、それに越したことはありません。

 「退職代行サービス」は、私は会社と社員の信頼関係があれば、不要なサービスだと思っています。退職の際には、会社は「残念だ」と言いながらも、社員のステップアップを願って快く送り出し、その後も機会があればビジネスで付き合えるような関係ならば、このサービスを使う人はいないでしょう。

 逆に「退職は裏切り行為」「自社の仕事が困る」など、会社が一方的な姿勢で引き留めをしたり、手間と時間をかけてあきらめさせようとしたりするのは、不誠実な嫌がらせでしかありません。
 「退職者を出すと上司がペナルティーを受ける」という会社がありますが、こういうことが過度の引き留めを助長して、「退職代行サービス」がどんどん利用される一因となっています。
 「自分の退職すら人任せなのは非常識」などと批判する人がいますが、必ずしもそうとは言えないケースもずいぶんあります。

 退職届まで出してきた社員が、引き留めによってそれを撤回したケースは、私の長い人事経験の中でも、ほんの数人しかいません。届けを書くほどの決意をした段階でいくら引き留めても、ほぼ意味がないということです。
 その反面、一度辞めても出戻ってきた社員は、実は結構大勢います。社外の空気を吸ってみて、初めてわかることがたくさんあるそうです。
 退職の意思は本人が決めることであり、その意思を変えさせようと強引に振る舞うよりも、それを受け入れて良い関係のまま見守る方が、会社にとってはよほどメリットがあります。

 「退職代行サービス」について、理想はいつか役目を終えて消滅していくことですが、今のところ、それは当分難しそうだと思っています。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

記事の先頭に戻る

広告

写真で見るニュース

  • CX-30(写真:マツダ発表資料より)
  • PASSION DIAMONDの取り扱い商品例。(画像:D.Tech発表資料より)
  • コンチネンタルタイヤのアプリと連動する新タイヤ(画像:Continental AG発表資料より)
  • カローラ スポーツ HYBRID G“Z”(2WD)、カローラ ツーリング HYBRID W×B(2WD)、カローラ HYBRID W×B(左から、いずれもオプション装着車)(画像: トヨタ自動車の発表資料より)
  • AI搭載の小型汎用ロボット「ZUKKU」を活用した健康増進プログラムのイメージ。(画像: ハタプロ発表資料より)
  • 中性子星と発せられたパルサーの想像図 (c) B. Saxton (NRAO/AUI/NSF)
  • 第2ターミナルの内部。(画像: 中部国際空港の発表資料より)
  • ケニアでの実証実験に使われる産業用無人ヘリコプター「フェーザーR 
G2」(画像:ヤマハ発動機の発表資料より)
 

広告

ピックアップ 注目ニュース