「不満分子」も「改革者」も出発点は同じ

2019年8月12日 16:13

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 仕事をしていれば、それがどんな立場であっても、何かしらの不満があるのは普通のことです。違いがあるのは、その不満に対してどんな行動をとるかです。

 ある会社の課長は、部下の若手社員から、会社に対する不満を突き上げられ、いろいろ悩んでいました。言われることは確かに正論ではあるものの、そう簡単には変えられない会社の事情も知っています。
 その都度説明をするものの、なかなか本人の納得は得られません。
 そんなやり取りが続くので、課長は部下の若手社員に対して、少しイラつきを感じています。
 上司からすれば、いちいち不満をぶつけてくる部下は、あまり好ましいものではありません。やっぱり自分の指示に忠実で、不平不満を言わずに働く部下の方が、上司としては扱いやすいですし、良い評価をしてあげたくもなるでしょう。

 しかし、それはもう少し冷静に考えなければなりません。
 「不満がない」というのは、一見良さそうに感じますが、それは「今のままでよい」「改善は必要ない」という認識を表します。
 逆に「不満」は、現状に対する課題指摘であり、改善が必要だという認識です。それがなければ、そもそも「不満」を持つことはありません。つまり、「不満がある」ということは、それが課題だと思っていて、直した方がよいという「改革意識」につながっています。
 「改革」の出発点は、多くが現状への「不満」からです。

 ただ、問題はそこから先で、その後の姿勢や行動で、ただの「不満分子」になる人と、本当の「改革者」になる人に分かれていきます。その違いはとても単純で、「不満分子」は問題を会社のせい、上司のせい、他人のせい、環境のせいなどにして、自分では行動しようとせず、「改革者」は、何か少しでも改善しようと上司に相談し、周りに働きかけ、何かできることから提案、実行をしようとします。

 これはある会社であったことですが、中途採用面接での過去実績の話から、「課題指摘が的確」「問題意識がある」と評価されて入社した社員がいました。しかし、実際に入社してみると、何かと常に不満を言うだけで、そのことに対して自分では行動しない「不満分子」だったということがありました。

 あくまで私の経験ですが、一度「不満分子」になってしまった人が、そこから「改革者」に戻った例は、まだ見たことがありません。自分では行動せずに、批判や評論に終始することが身についてしまっていて、一度そうなってしまうと、それを変えることはとても難しいようです。

 反対に、自ら行動する「改革者」だった人が、ただの「不満分子」に変わってしまったのは、何度も目にしたことがあります。
 これは、年齢とともに行動力が衰える、経験を積むほどに事情が分かってあきらめる、偉くなって自分でやらずにすむ習慣になるなど、様々な理由が考えられます。同じく、行動しないことが身についてしまうと、それを変えることは難しいです。

 組織の改革、改善の出発点は「不満」ですが、その後の意識次第で、本当の「改革者」になったり、ただの「不満分子」で終わったりします。
 「不満」自体は、問題意識の表れとして、否定してはいけません。上司にとって扱いやすい従順な部下は、往々にして問題意識が足りないことがあります。逆に不満や反発をぶつけてくる人は、間違いなく問題意識を持っています。しかし、その後の行き先は、本人の姿勢や周りの働きかけによって大きく変わります。
 「不満分子」も「改革者」も、出発点が同じということは、注意しておかなければなりません。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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