NEC、熟練者の意図を学習するAI開発 高度なスキル必要な意思決定が可能に

2019年7月19日 09:05

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今回開発された技術の特長(画像: NECの発表資料より)

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  • 放送局の広告スケジューリング業務で適用した場合

 NEC(東京都港区)は17日、熟練者の行動履歴データを学習することで、柔軟な判断や高度なスキルが求められる業務を大幅に効率化できるAI技術を開発したと発表した。平準化が難しい属人的な業務に適用することにより、非熟練者でも熟練者と同等レベルの成果が挙げられる可能性があり、人材不足や業務負担の増大といった課題解決に貢献するものと期待される。

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 熟練者の意思決定プロセスは、経験や勘といった、可視化や定性・定量化できない要素に依存しているため、熟練者の業務を平準化することは困難なことが多い。NECは熟練者の過去の行動履歴をもとに意思決定モデルを構築することに成功、迅速で的確な判断を自律的に導き出すことが可能になったという。

 今回のAI技術の開発では、「逆強化学習」と呼ばれる手法が使われている。強化学習が報酬をもとに最適行動を導き出すのに対し、逆強化学習は最適行動から報酬を予測する。つまり、熟練者の行動履歴から行動基準となる意図を学習する技術といえる。

 現在使われている逆強化学習は、ディープラーニングと予測モデルをベースとし明示的なルールに従って学習するため、主に自動運転やロボット制御のような状態遷移が予測しやすい領域に限られている。より複雑で不確実性の高い環境では状態遷移の予測誤差が生じるため、今回の技術開発に当たっては、予測モデルを用いない方法を開発する必要があった。

 そこで行動履歴データからサンプリングを行い、それをもとに予測モデルを使わなくとも精度を高められる方法を開発。精緻な予測モデルや最適化シミュレーションを不要にしたことで、学習時間やコストも大幅に削減できるという。

 今回のAI技術を営業販売業務に活用した場合、成約率の高い営業担当者の行動履歴をベースに見込み客や常連客などの顧客ごとに最適な対応を学習し、経験の浅い営業担当者でも的確で効率的な営業活動が可能になるという。

 これまでAIの活用領域は商品の需要予測や顧客の嗜好分析など意思決定に役立つ情報の提供が中心だったが、AIが意思決定そのものを助ける段階まで進展しているといえそうだ。(記事:Kei_T・記事一覧を見る

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