JAL、VRによる整備士の訓練を試験導入

2019年7月19日 07:44

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 日本航空(JAL)は17日、東京天王洲の本社近くにあるJALイノベーションラボにおいて、VR(仮想現実)を採り入れた航空機整備士訓練の教材を報道陣に公開した。

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 この教材は、JALと東芝システムテクノロジー(東京都府中市)が共同で開発したもので、リージョナルジェット機のエンブラエルE170とE190型機の整備士を対象にしたもの。

 教材はE170とE190の整備訓練を行っている教官が監修した。一等航空整備士という国家資格を取得するために必要な訓練の一部として、「エンジンの試運転」を訓練する。

 ソフトは汎用性のパソコンでも使用できるようになっており、実際の音声や計器の動きを忠実に再現している。場所や時間に関わらずに実際の航空機に近い環境下で、身体を動かしながら訓練ができる。

 VR教材により訓練できる「エンジンの試運転」作業は、コックピットからエンジンを操作して始動させるもので、数ある整備訓練の中でも難易度の高いもののひとつだ。そこを集中的に訓練できるところが今回の大きな意義であり、CGで制作されたコックピットは実際の航空機の写真を元にミリ単位で寸法を合わせて再現したという。この訓練では、30分以内に200以上の動作を行う。

 JALには現在およそ3,000人の整備士が居るが、該当機種の一等航空整備士資格を持つのは約230人であり、有資格者を増やす必要に迫られている。ところが、最近の航空機は故障が少なく、実際に不具合を修理する機会が少なくなっているという。

 加えて、JALのエンブラエル機発着の拠点が大阪の伊丹空港であり、羽田空港や成田空港に在籍する整備士は、実際の航空機に触れる機会も殆どないという。

 また航空機を使う訓練には、実際の機体を用意しなければならないなどの制約がある。VR教材の導入により、本物の航空機に近い環境で訓練ができることで、作業の習熟度や訓練期間短縮などのメリットがある。

 JALは今後、訓練試験を重ねることにより実用化を目指したいとしている。(記事:kan1713・記事一覧を見る

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