【どう見るこの相場】週間騰落率上位の日経225銘柄の順張り・逆張りで「マッチ・ポンプ効果」の米国市場のフォローも一考余地

2019年6月10日 09:05

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 令和時代に入って早、5週間、日経平均株価がやっと週間で上昇した。前週(6月3日~7日)の週間の値上がり幅は556円高、上昇率は1.37%となった。もっとも週末7日の東証第1部の売買代金が、1兆6359億円と活況の目安の2兆円を割って低調だったことが気に掛かるところだが、取り敢えず株価指数だけでも堅調に推移したことで、10連休明けこの方、買いぶら下がり放なしで、参戦意欲も萎えていた市場参加者はおしなべてホッと一息をついたこととよろこびたい。

 しかし東京市場のあとに開いた米国市場は、もっと大変なことになった。ダウ工業株30種平均(NYダウ)は、263ドル高と5日続伸して引け、週間の値上がり幅は、1168ドル、上昇率は4.71%に達し、この上昇幅は、史上最高だった2018年11月下旬の1252ドル高に続く史上2番目の記録となった。東京市場は、ますます米国市場のミラー相場化しているが、これではかつての財務大臣の委員会答弁とは真逆に、母屋(NY市場)は豪勢にすき焼き、離れ(東京市場)は、つましくおかゆを食べている趣である。

 この日米両市場の彼我の差は、もちろん米国市場の「マッチ・ポンプ効果」によるものである。米国のトランプ大統領が、大型連休中に中国への制裁関税の引き上げに言及し、さらに5月30日にはメキシコへの不正移民流入対策の不満からも5%の関税発動を表明し、世界的な景気減速懸念に火をつけ(マッチ)世界同時株安を呼び込んだ。これに対して、前週末発表の米国の5月の雇用統計では、非農業部門の雇用者の増加が、市場予想を大きく下回って、FRB(米連邦準備制度理事会)の金利引き下げの確率が高まったとして、景気減速懸念の火に水を掛ける(ポンプ)結果となった。しかもトランプ大統領は、週末夜にはメキシコへの関税発動を見送ることを発表し、一段の上値追いに期待を高めた。週末に日本で初めて開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、貿易摩擦激化が世界経済の下ぶれリスクとしてさらなる行動を取る用意をするとの共同声明を採択したが、誰が率先して米国と中国に鈴をつけるかにまでには踏み込まず、株価後追いを黙認したようにみえないこともない。

 ということは、この「マッチ・ポンプ」効果で週明けのマーケットは、「リスク・オフ」が「リスク・オン」、世界同時株安が世界同時株高に一変する可能性につながる。東京市場も、NY市場への追随を強めるはずだ。となると問題は、どの銘柄に照準を当てて株高を効率よく先取りするかとなってくる。順張り、逆張りなどあらゆる投資スタンスで幅広い銘柄に網を張ることが必須となるが、今週の当コラムでは、ややテクカル的に傾くが、日経平均株価の構成銘柄のうち、前週1週間の値上がり率ランキングの上位にランクされた銘柄の順張りと、同じく値下がり率順位の上位に入った銘柄の逆張りとに絞ってセレクトし、東京市場でもすき焼きを食することができる一考としたい。

■最高値・年初来高値更新の第一三共、新生銀行など順張りでなお上値チャレンジ

 日経平均株価構成銘柄で週間値上がり率ランキングのトップとなったのは、第一三共<4568)(東1)で、7日に上場来高値6088円まで買い進まれ週間上昇率は15.8%に達した。今年3月に発表したアストラゼネカとの抗体薬物複合体(ADC)の開発・販売提携で最大69億ドルの対価を取得することとなってストップ高、このADCの評価で国内証券の目標株価引き上げも続いて大きく上昇した。同じように7日に年初来高値を更新し、週間値上がり率が7.5%で順位第3位となったのが、新生銀行<8303>(東1)だ。今年5月に3月期決算とともに自己株式の取得とスルガ銀行<8358>(東1)との業務提携を同時発表、強弱感の対立のなか上値を追い、外資系証券投資判断・目標株価引き上げもフォローとなった。両銘柄とも信用取組が拮抗し逆日歩もつき、なお売り方の買い戻しも想定されるところで順張り妙味を示唆している。

 逆に6月月初につけた年初来安値から底上げステージ入りし週間値上がり率ランキングの上位に並んだのが、横浜ゴム<5101>(東1)、東海カーボン<5301>(東1)、日東電工<6988>(東1)である。ようやく25日移動平均線近辺まで戻し業績伸び悩みや下方修正は織り込み済みで、なお投資採算的にも低PER、高配当利回りとなっており、リバウンド幅拡大が見込める。このほか上昇率2位のアドバンテスト<6857>(東1)は、米投資ファンドの買い増しに前週末のフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の上昇が加わって今年4月高値を目指す展開が想定され、上昇率順に同じように今年4月に年初来高値をつけた大林組<1802>(東1)、アマダホールディングス<6113>(東1)、三井金属工業<5706>(東1)、日立建機<6305>(東1)なども、低PER修正の4月の高値更新相場再現が期待される。

■目標株価引き下げの伊藤忠、太陽誘電など週間下落率上位株は「リターン・リバーサル」チャンス

 「下げた株ほどよく戻る」とするリターン・リバーサル買いの対象となるのが、日経平均株価の構成銘柄のうち、前週の週間値下がり率ランキングの上位に顔を並べた銘柄である。ワーストワンは、伊藤忠商事<8001>(東1)で、国内証券が投資判断は上位をキープしたものの目標株価を引き下げたことなどから4.7%下げ、次いで太陽誘電<6976>(東1)、キリンホールディングス<2503>(東1)、静岡銀行<8355>(東1)、ソフトバンクグループ<9984>(東1)、宝ホールディングス<2531>(東1)、OKI<6703>(東1)、ユニー・ファミリーマートホールディングス<8028>(東1)、マルハニチロ<1333>(東1)、リクルートホールディングス<6098>(東1)などと続く。

 このうち太陽誘電と静岡銀行は、伊藤忠と同じく目標株価の引き下げはあったものの投資判断の変更はなく、PER評価からみても伊藤忠と同様に10倍を割って下げ過ぎを示唆している。ソフトバンクGは、計画中の「ビジョン・ファンド」第2号の組成に不透明感が増しているとして1万円の大々台を割ったが、米国ハイテク株の急上昇とともに投資環境の好転も想定され、主力株人気の再燃が有力になる。

 信用取組が売り長で逆日歩のつく静岡銀、コンコルディア・フィナンシャルグループ<7186>(東1)の金融株は、長期金利低下による利ザヤ縮小懸念を売り方の買い戻しがカバーする展開も想定範囲内となり、6月3日に年初来安値2880円へ売られ週間でも1.6%下げた出光興産<5019>(東1)は、米国のニューヨーク・マーカンタイル取引所に上場の原油先物価格WTI(ウエスト・テキサス・インディエイト)価格が、前週末に今年1月以来の安値から続いて持ち直したやはり「リスク・オン」に変わったダブル効果も加わって一段とリバウンド幅を拡大させよう。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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