100年に1度の磁気嵐が呼ぶ扇型オーロラの実態 極地研などの研究

2019年5月22日 16:25

印刷

1958年2月11日夜7時に気象庁地磁気観測所女満別出張所でスケッチされた図を座標変換したもの。中心が真北。仰角と方位角のグリッドは10度間隔。(画像:国立極地研究所発表資料より)

1958年2月11日夜7時に気象庁地磁気観測所女満別出張所でスケッチされた図を座標変換したもの。中心が真北。仰角と方位角のグリッドは10度間隔。(画像:国立極地研究所発表資料より)[写真拡大]

  • 1770年9月に京都から見えたオーロラを描いた絵図。松阪市所蔵の古典籍『星解』より。(画像:三重県松阪市提供)
  • 1872年3月1日9時25分という説明が書かれているトルーヴェロの絵画。(画像:国立極地研究所発表資料より)

 1958年2月11日、日本各地にオーロラが出現した。100年に1度ほどの巨大磁気嵐の発生に伴うものであるのだが、このときのオーロラは特徴的な扇形をしたオーロラだったのではないか、というのを記録に基づいて分析したのが国立極地研究所(極地研)などによる今回の研究である。

【こちらも】JAXAら、宇宙空間での高エネルギー伝搬を検出 オーロラ出現や人工衛星の障害に

 研究に参加したのは、極地研の片岡龍峰准教授、気象大学校の藤田茂講師、国文学研究資料館の山本和明教授ら。

 1770年9月17日に史上最大規模の磁気嵐が発生したとき、「赤い背景に白い筋が扇状に広がる」オーロラが観測されたことがある。当時江戸時代の日本でもこれは注目され、『星解』という古典籍にその図を今も見ることができる。

 1つの仮説として「巨大磁気嵐が扇形オーロラを呼ぶ」と仮定することができるのだが、いかんせんこの巨大磁気嵐という現象が、100年に1度程度の頻度でしか発生することのない稀な自然現象であることから、詳しく研究するための手がかりがほとんどないという問題がある。そこで研究グループは、まず扇型オーロラに関する手がかりを蒐集することを試みた。

 前述の通り1958年2月11日に巨大磁気嵐が発生しているわけであるが、このとき出現したオーロラも扇形オーロラだったのではないかと仮定して調査を行ったところ、気象庁最北の地磁気観測施設である、北海道・女満別出張所の当時の気象庁職員が残した手書きスケッチの中に、扇形に広がるオーロラの図を発見することができた。

 またその日、女満別出張所において連続全天写真観測が行われていたことから、研究グループはその連続写真のマイクロフィルムを入手、スキャニングしてデジタル化した。

 以上のデータから分析した結果として、扇形オーロラは大規模な磁気嵐に基本的な特徴である、ということがほぼ断定できたという。

 なお研究の詳細は、Journal of Space Weather and Space Climate誌に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事