JAと富士通、全農広域土壌診断システムを開発 農地の肥満を解消へ

2019年2月26日 09:20

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全農広域土壌診断システム(写真:JA全農の発表資料より)

全農広域土壌診断システム(写真:JA全農の発表資料より)[写真拡大]

 JA全農は22日、富士通と共同で「全農広域土壌診断システム」を開発し、4月からサービスを開始すると発表した。

 農水省の報告によれば、肥料の三要素は、窒素、りん酸、カリウムだ。窒素は植物の成長を、りん酸は植物の開花や結実を、カリウムは根の発育を施す。二次要素は、カルシウム、マグネシウム、硫黄であり、肥料の吸収促進、新陳代謝、葉緑素の生成に寄与する。

 一昔前には、動植物性の有機物が原料の有機質肥料が主流であった。人糞や鶏糞などの堆肥である。それに取って代わったのが化学的に製造した化学肥料だが、理由は効果だ。最も肥料成分が高い鶏糞堆肥の窒素は3%、りん酸は7%、カリウムは4%だが、高度化成肥料では、窒素15%、りん酸15%、カリウム15%と高効率を示す。

 そこで、作物の生産性向上のためにより多くの化学肥料が施用され、農業の生産性向上を達成してきた。ところが肥料が多ければ、作物の収穫量が増える訳ではなく、適正な肥料量が存在する。つまり肥料が少なすぎてもいけないが、肥料が多すぎても収穫量は減少する。

 現在では農業地も肥満体に悩む時代のようだ。

 その肥満分析に相当する土壌分析では、数段階の組織を経て依頼されるため、分析着手の待ち時間に加え、処方箋や施肥設計を作成可能な人材が不足。今回、Web上でリアルタイムに確認できるシステムを開発した。

●全農広域土壌診断システムの特長

 化学肥料の製造コストの約6割を原材料費が占めるが、肥料原料の大半を輸入に頼る。世界的な人口増や穀物需要の増大を鑑みれば、肥料需要は年々増大するであろう。適正な化学肥料の施用が求められる所以である。

 そのためJAは、「健康な土づくりと適正施肥による施肥コスト抑制運動」に着手。全国23カ所の土壌分析拠点にて年間約14万点の土壌分析を実施中だ。

 広域土壌分析センターでは、土壌分析依頼に基づき、土壌分析・診断・処方箋を作成。指導現場では、施肥設計・肥料提案を実施。土壌分析や施肥設計データは、Web上で一元管理。土壌の経年変化を蓄積することで、処方箋・施肥設計ノウハウの共有化し、迅速な営農支援を可能にする。

 他方JAは2018年4月24日、営農管理システム「Z-GIS(Geographic Information System)」の運用を開始。様々な農業データを地理情報と結びつけて視覚的に表現する地理情報システムだ。

 全農広域土壌診断システムは、Z-GISを分析値データに反映し、利用者拡大を図る狙いだ。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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