第9の惑星なしでも太陽系外縁天体の運動を説明可能? 英ケンブリッジ大学

2019年1月25日 12:47

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 海王星の外側に存在する太陽系外縁天体。この奇妙な軌道を説明するには、海王星の外側に「第9の惑星」の存在を仮定する必要があるため、その探索は天文学者の研究の的だった。この第9の惑星の存在に異を唱える研究が発表された。

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 英ケンブリッジ大学は21日、氷から構成される円盤が存在すると仮定すれば、太陽系外縁天体の奇妙な軌道を説明できるという研究を報告した。

■第9の惑星の存在が必要とされる理由

 地球と太陽間の約30倍もの距離を公転する海王星。その軌道の外側に、「カイパーベルト」と呼ばれる天体が密集したドーナツ状の帯があり、カイパーベルトには、数千もの太陽系外縁天体が存在する。太陽系が生まれた初期段階から存在する微惑星で、惑星へと成長できなかった天体だ。

 この太陽系外縁天体の中に、離心率の高いが約30個の天体が存在することが、天文学者によって発見されている。これは、従来発見された8つの惑星によって説明できないものだという。もし海王星の外側に未発見の9番目の惑星が存在すれば、その重力の影響により、これら太陽系外縁天体の奇妙な軌道が説明できる、という仮説を天文学者は設けた。

 第9の惑星が存在すると仮定すると、その質量は地球の10倍以上になるという。ところが、第9の惑星はこれまで検出されたことはない。

■第9の惑星に代わる氷塊からなる円盤

 研究グループは、一部の太陽系外縁天体の軌道が奇妙なのは、海王星のさらに外側に存在する“円盤”を構成する小さな天体の重力によるという説を発表した。円盤を構成する小さな天体を組み合わせると、地球の10倍の質量になり、太陽系外縁天体の奇妙な軌道をその重力で説明できるというのだ。

 研究グループは、第9の惑星が存在すると仮定したモデルと、海王星の外側に巨大円盤が存在すると仮定したモデルの2種類を検証した。その結果、既知の惑星と巨大円盤からの重力で、太陽系外縁天体の奇妙な軌道を十分説明できることを示した。

 第9の惑星が存在しないと結論づけるには、証拠が足りないという。巨大な円盤も第9の惑星と同様に検出されていないのがその原因だ。「我々は、新たに太陽系外縁天体を発見し、奇妙な軌道の説明を助けるより多くの証拠を集める」と研究者の一人であるケンブリッジ大学の Antranik Sefilian氏は語っている。

 研究の詳細は、米天文学誌Astronomical Journalにて21日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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