雌の好みの多様性は色覚遺伝子発現の個体差に依存する、東北大などの研究

2018年11月17日 11:34

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野生グッピー。個体ごとに体色の異なる雄3匹と雌1匹(右下) (群馬大佐藤綾氏提供)

野生グッピー。個体ごとに体色の異なる雄3匹と雌1匹(右下) (群馬大佐藤綾氏提供)[写真拡大]

 グッピーは観賞魚としてよく知られる魚である。このグッピーのオスは派手な体色を持ち、そしてメスは非常に顕著な色に対する「好み」の種内多様性があることが知られている。その多様性は、色覚そのものの多様性に依存するということを、今回東北大学と東京大学の共同研究グループが初めて立証した。

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 グッピーのメスに色覚の多様性が存在する可能性は古くから指摘されてはいた。それとオスの体色の多様性は相互的に進化してきたものと考えられてはいたのだが、それを立証する証拠はなく、仮説の域を出ていないものであった。

 グッピーには赤や緑の知覚に関わる長波長感受系オプシンの一つLWS-1に、異なる波長感受性を持つ遺伝的多型がある。東北大学生命科学研究科の酒井祐輔(現基礎生物学研究所博士研究員)と河田雅圭教授は、東京大学との共同研究によって、異なるLWS-1遺伝子型と生育時の環境の違いが、オプシン遺伝子の発現量にどう影響するのかを調査した。

 結果として、LWS-1とLWS-1の近傍に存在する2つの遺伝子の発現量が、異なる遺伝子系のもとでは異なっていることが判明した。

 さて、問題はこれらの違いが、実際の行動に影響を及ぼすレベルで光の知覚に関わっているかどうかである。オプトモーター反応を用いた行動実験によって光感受性を測定したところ、LWS-1の発現量が高い個体ほど、緑やオレンジの単一波長光に対して高い感受性を示すことが明らかになった。

 さらに、画像処理によって体表面のオレンジ色を改変した同じオスのビデオ画像を使ってメスの反応性を測定したところ、派手なオレンジを好むメスとそうでないメスが、異なる遺伝子系を持っていることが立証された。

 研究の詳細は、Proceedings of National Academy of Science of the United States of America誌に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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