カリスマリーダーほど配慮が細かいという話

2018年11月15日 17:28

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 かつて早稲田大学のラグビー部を二連覇に導き、「日本一オーラがない監督」といわれた中竹竜二氏の対談記事が目に留まりました。

【こちらも】「強いリーダー」と「ワンマン」「独善」の紙一重

 いくつかの興味深い話題の中で気になったのが、「カリスマリーダーは細かい配慮もしている」と言う話でした。

 従来から評価されてきたカリスマ型リーダーの行動を細かく研究したところ、彼らはトップダウンの強力な言動だけでなく、それと同じくらい細やかな配慮もしていることがわかってきたといいます。

 ラグビーでは、中竹氏の前の監督で、今はトップリーグのヤマハ発動機ジュビロを指導している清宮克幸氏は、トップダウン型リーダーの典型のように言われますが、実はものすごく繊細な気配りをする人だそうです。
 また、前の日本代表監督だったエディ・ジョーンズ氏も同じくトップダウン型と言われますが、選手一人一人とバランスよくコミュニケーションをとるために、そのプランニングまでしていたそうです。
 全体に向けては「俺の言うとおりにしろ」と強く発しても、陰では選手一人一人に「ぜひお前の意見が聴きたい」といって意見を求め、一対一のコミュニケーションを欠かさないそうです。
 優秀なリーダーは、自分で引っ張るリーダーシップと、部下を支援するフォロワーシップを状況に応じて使い分け、その方法のバリエーションが豊かだということが、研究で明らかになってきているとのことでした。

 最近、ある会社でこんな話を聞きました。新たに部門長に昇格させた者が、肩書がついた途端にパワハラ体質に変貌し、何でも高圧的な命令口調に終始して、部下たちが疲弊してしまっているそうです。
 昇格推薦をした上司は、「そういうタイプの人間には見えなかったのですが・・・」と言って落ち込んでいます。

 こちらは優秀でないリーダーの典型な訳ですが、優秀なリーダーかそうでないかの違いは、私は「リーダーが思っている目的の違い」だと思っています。

 優秀でないリーダーでは、ほとんどの場合が、「自分の○○のため」に活動しています。
 前述のリーダーのように高圧的な態度に終始するのは、支配欲や権威欲といった「自分の欲求を満たすため」ですし、無責任で腰が引けた態度に終始するリーダーがいたとすれば、「自分の保身のため」となります。
 有無を言わせない態度は「自分の意見を通すため」「自分の思い通りに運ぶため」「自分のやり方にこだわるため」でしょう。指導するためのスキルが不足しているとも言えます。

 これに対して優秀なリーダーは、「最高の成果を出すため」に活動します。強く引っ張ることや命令することが成果につながるならばそうしますし、人の意見を聞いた方が良ければそうするでしょう。
 優秀なリーダーであれば、そのどちらか一方だけでは成果が出ないことを知っているので、その時の状況に合わせて様々な方法を使い分けます。個人的な欲求や感情には左右されません。そういう意味で、自分のことに対しては無欲と言えるのかもしれません。

 スパルタ一辺倒で結果を出したリーダーも、かつていましたが、もしその人がもっと柔軟に、多くのバリエーションを持ってメンバーと接していたとしたら、実はもっと簡単に、もっと早く、もっと高いレベルで結果が出ていたのかもしれません。少なくとも最近の研究成果ではそういうことのようです。

 スポーツ界では、相変わらずパワハラ的な指導が発覚し続け、問題になっています。こういうことが続くのは、結局は指導者のスキル不足と勉強不足であり、そこから始まる自己中心的な態度であり、「最高の成果を出すため」には活動していない証明です。
 優秀なリーダーになりたければ、もう少しいろいろ学び直さなければいけないと思います。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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