「若者を認めないと上の世代は生き残れない」という話への納得

2018年11月12日 18:02

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 ある書籍の紹介記事に、こんな話がありました。
 「最近の若いやつは・・・」という言葉に関するものです。上の世代がこの言葉を口にした段階で、終わりの始まりだと言います。

【こちらも】「年配言葉なら許されるのか?」という指摘への納得

 ご存知の方も多いでしょうが、この手の苦言はエジプトの古代遺跡からも同じことが書かれたものが見つかっていて、人類誕生の時期までさかのぼっても良いような、時代を問わずに共通した話だと言われています。

 この昔からの苦言について書かれた一節に、とても納得してしまいました。
 それは「あとから生まれてきた者の方が優秀なのは当たり前で、もしそうでなければ人間はとっくに絶滅している」というものです。
 もしも「昔の方が優れていた」との言い分が正しいとしたら、それは進化でなく退化であり、スケールダウンを繰り返している生物が生き残るわけがないと述べられていました。

 動物でも植物でも、時代や環境に合わせて成長を続けてきたから生き残れるわけで、後から生まれた「年下」の方が「種」として優秀なのは、自然界のルールだとされていました。
 若者世代への批判は、ほとんどが「進化への乗り遅れ」であり、「年下の方が優秀」という事実は、認めたくないだろうが、認めなければならないとされていました。
 「いや、そんなことはない」という年長者はいるでしょうが、私はその通りだと思いました。

 例えば、「最近の子供はひ弱だ、体力がない」などと言われます。実際に体力テストなどをすると、そういう結果も見られるようですが、それでも人の寿命は延びています。もしも本当にひ弱で体力がなくなっているとしたら、それは人間が絶滅に向かい始めたことになる訳ですが、「人生100年時代」などと言われている今のところは、そこまでの兆候はありません。

 「若者が本を読まなくなった」と言いますが、SNSやネット上の情報など、読んでいる文字数自体は結構多いという話を聞いたことがあります。情報の取り方が変わってきたということでしょう。

 「文章が書けない」とか「会話が下手」などという人がいますが、その行為自体が他の方法に置き換わっていたり、必要性が薄れていたりしているのかもしれません。
 「ナイフで鉛筆が削れない」「栓抜きで栓が空けられない」「缶切りが使えない」などは、今の時代でそれができなければ困る場面はほとんどないですから、そのことを取り上げて「今どきの若者は何も知らない」などと言うのはかなり筋違いです。

 「昔の方が優れていた」「今の方が劣っている」と思っても、それは目の前に見えている局面の中だけのことで、実はもっと大きな進化の中で変わってきていることなのかもしれません。
 もしも「最近の若いやつは・・・」と言いたくなることがあったとしても、いったん冷静になって、「なぜそうなのか」を考えると、若者の方が理にかなっていることが数多くあるはずです。

 新しい物事への順応性は、若い世代の方が間違いなく上です。それは生き物にとっての「進化」です。
 上の世代は、「年下の方が優秀」ということを、もう少し理解しておかなければならないと思います。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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