超銀河団「ハイペリオン」発見 宇宙初期に形成 太陽の1000兆倍以上の質量

2018年10月29日 07:44

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宇宙初期に形成された「超銀河団」を発見。(C)ESO/L. Calçada & Olga Cucciati et al.

宇宙初期に形成された「超銀河団」を発見。(C)ESO/L. Calçada & Olga Cucciati et al.[写真拡大]

 ビッグバンから20億年後の宇宙で、無数の銀河が集まった超銀河団が発見された。今日の宇宙で発見された中でも最大級の構造で、ギリシャ神話に登場する巨体を持つ神「ハイペリオン」の名が冠せられた。その質量は、太陽の1000兆倍以上にもなるという。

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 およそ140億年前とされる宇宙の誕生から約20億年というのは、宇宙的には「初期」というらしい。今回発見された規模の大質量構造はこれまでにも観測されていた。ただこれほどの巨大な構造まで進化するにはそれだけの時間が必要となる。その点ハイペリオンが宇宙誕生から約20億年という初期宇宙に発見されたことは、天文学者たちを非常に驚かせることとなった。

 今回ハイペリオンを発見したのはオルガ・クチアッティ氏率いる国際的な天文学者のチームで、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡(VLT)にある多目的多物体分光計(VIMOS)を使用し、ろくぶんぎ座の「コスモス・フィールド」という領域内で確認した。ちなみに彼らはコスモス・フィールドの観測にVLTのほか、国立天文台のすばる望遠鏡(ハワイ)も使用している。研究チームはハイペリオンの非常に複雑な構造に注目、内部は7つの高密度領域が銀河フィラメントによって結ばれており、大きさは他の超銀河団に匹敵するものの、その構造は他と一線を画すものであった。

 この構造の差はおそらく超銀河団が作り上げられるに至った「時間」が関係している。近傍の超銀河団は数十億年をかけて高密度の領域を作り出したのに対し、ハイペリオンは「若い」ため、それだけの時間がかけられなかったということだ。宇宙の歴史においてかなりのスピードで巨大化したハイペリオンは、さらなる時間をかけて「おとめ座超銀河団」に似た巨大構造へと姿を変えるだろうと予想されている。

 クチアッティ氏は「ハイペリオンをより理解し、他の似たような構造のものとの違いがわかれば、宇宙の過去と未来の進化に関する知見へと繋がる。宇宙の大規模な構造の歴史を明らかにできるかもしれない」と語る。(記事:秦・記事一覧を見る

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