パナソニック、業務用の骨伝導ヘッドセット発売 「聞く」「話す」を分離

2018年9月14日 21:54

印刷

業務用骨伝導ヘッドセットパック(写真:パナソニックの発表資料より)

業務用骨伝導ヘッドセットパック(写真:パナソニックの発表資料より)[写真拡大]

  • 業務用骨伝導ヘッドセットパック

 パナソニックは13日、鼓膜や気導の経路を使わずに、耳近傍の側頭部と首を通じて「聞く・話す」を可能にした骨伝導方式の業務用ヘッドセットを9月から発売すると発表した。

【こちらも】BoCo、骨伝導イヤホン対応のモバイルヘッドホンアンプ「WBA-1」発売

 自分の声をテープレコーダで聴いたとき、その違和感は、誰でも感じた経験であろう。それは、普段の会話で聴く自分の声と全く異なるのだから。通常聴いている音は、空気中の振動として伝わる気導音。音波の振動が鼓膜を震わせ蝸牛へ、そして聴覚神経を介して脳へと伝わる。これが、我々が通常に聴く音だ。他方、自分の声を聴くときは、気導音に加えて、音波が聴覚周りの頭蓋骨に直接振動を与える骨伝導の音が加わる。

 難聴であったベートーベンが、偉大な曲を後世に残せたのは、この骨伝導を活用したと考える人がいる。指揮棒を口に加え、指揮棒の先をピアノに点け、音を聴いたというのだ。では、骨伝導は全ての難聴者に有効かというと、そうではない。耳から鼓膜までの外耳、鼓膜から蝸牛までの内耳に障害がある場合に限られる。

 骨伝導を利用して音を聴くヘッドホンは、耳ではなく、骨で聴くものだ。装着は耳ではなく耳近傍の骨であるため、耳を塞ぐ必要がなく、外音も一緒に聴くことができるのが、大きなメリットであろう。他方、音質を追及し、専用振動板を使用する通常のヘッドホンに比べれば、骨を介すという構造上、音質が劣るのは歪めない。音楽用の骨伝導ヘッドホンが普及しない理由であろうか。

●業務用骨伝導ヘッドセットパックの特長
 用途を業務用に絞り、作業現場でもクリアな音声コミュニケ―ションを追及していることであろうか。音質を重視する一般のヘッドホンと、ユースケースでの差別化を狙う。指向性マイクや骨伝導マイクにより騒音環境でもクリアな音声通話を実現。また、53グラムと軽量設計であり、防水性能も雨の中でも使用できるIPX5を実現した。

 ヘッドセットパックはモバイルPCや通信機器と接続可能である一方、その機器から電源供給する。バッテリーレス化は軽量化に繋がり、充電や電池切れの心配を解消。今回の発表での反響で、無線など新たな機能を追加するのであろうか。

●骨伝導(パナソニック、ヘッドセットパック)のテクノロジー
 通常のヘッドホンは比較的静音環境での用途を想定。逆に、騒音環境では雑音を拾ってしまう課題がある。騒音現場での作業を鑑みて、「聞く」場合と「話す」場合を分けたことが発想の転換であろうか。聞く場合は、骨伝導ヘッドホンを使用。耳栓での防音保護で耳を塞いでも音が聞き取れる一方、話す場合は、声帯の振動を拾って音声を伝達する。騒音の多い工事現場などでのクリアなコミュニケーションは、安心安全に繋がる。(記事:小池豊・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事