「同調圧力」と良い意味の「一体感」の違いを考えてみる

2018年9月5日 17:45

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 最近「同調圧力」という言葉が気になっています。
 意味を調べると、「特定の集団において、少数意見を持つものに暗黙のうちに多数派意見を強制すること」とありました。簡単に言えば、「みんなと同じように感じて、同じ価値観で動けという強制」となるのでしょう。私が一番嫌いなことです。

 「同調圧力」が強い組織の典型として、よく挙げられるのは昔の軍隊ですが、他にも学校や田舎の集落、古い体質の部活などが、そんな例に挙げられています。
 企業の場合は、このところダイバーシティ(多様性)が強く言われるようになり、「同調圧力」は以前よりも軽減されつつありますが、それでも歴史が古い会社などでは、今でもそういう体質をひきずっているところがあります。

 スポーツの競技団体などで起こっているパワハラ問題や、ブラック校則といわれる理不尽な学校の規則、都会ではあまりありませんが、地域内での嫌がらせなどは、多かれ少なかれ、この「同調圧力」が悪い作用をしている例でしょう。
 「同調圧力」が強まると、“同じでない人”の差別や排除が始まるということからも、決して好ましくはありません。

 その一方、良い組織や強いチームは、必ず「まとまりがある」「一体感がある」と言われます。「チーム一丸」が悪い意味で使われることは、まずありません。しかし、これらも“同調”といってしまえばその通りです。
 「圧力をかけていない」「強制はしていない」ということかもしれませんが、チームリーダーの立場からすれば、チームをまとめるにはメンバーたちに何らかの働きかけをするでしょう。働きかけ方次第では、それが“圧力”や“強制”となることもあり得ます。

 こう考えると、「同調圧力」と言われるものと、良い意味での「一体感」と言われるものの間には、何かしらの違いがあるはずです。
 ただ、そこをいろいろ考えてみたとき、例えば「納得感の有無」などを思いましたが、これは圧力によって思考停止に追い込まれているような場合もありますし、ただの「働きかけ」と「強制」の境界線も難しいところで、なかなか明確に説明できる違いが見つかりません。

 そんな中であえて思ったのは、次の二つのことです。
 一つは良いチームの場合、「一体感」のよりどころであるチームの目的が一貫していて、それに対して「同調圧力」の組織は、この目的がいつの間にか他の違う何かに置き換わっています。例えば、戦いに勝つことが目的だったのが、いつの間にか死ぬこと自体が目的になっていたというような話です。

 そしてもう一つは、「一体感」で共有しているのはチームの目的や目標であるのに対し、「同調圧力」の組織は、その行動のしかたまで共有を求めて強制していることです。アメフトの不祥事であった「試合に勝つこと」という目的以外に、選手の逃げ場を失くして「相手をつぶせ」などと指示するのは、まさに行動の強制にあたるでしょう。

 こうやっていろいろ考えて見たものの、しっくりいくような整理が未だできずにいますが、「一体感」と「同調圧力」の間には大きな違いがあると思う一方、実は紙一重なのかもしれないとも思っています。
 いずれにしても、「同調圧力」が強い日本社会では、この違いをしっかり意識しておかなければならないと強く思います。

 ※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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