「話しかけやすい人」の方が得をする

2018年8月9日 17:42

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 明治大学の齋藤孝教授の著書(「不機嫌は罪である」)の中に、「男性は40歳過ぎたら、普通にしていても不機嫌に見えると思った方がいい」とありました。
 わかっていたことですが、あらためて言われると、完全な当事者世代にあたる自分は、やっぱりちょっと落ち込みます。私の感じ方をちょっと付け加えると、「気をつけていないと、年を取るほど不機嫌さが増していく」ということです。

 あるイメージコンサルタントの方から、「一人で電車を持っているときの姿が、周りの人から見たあなたのイメージです」と言われたことがあります。何も考えずに無意識でボーっとしている状態ということでしょうが、やはり年々「不機嫌そうに見える」度合いが増している感じがします。
 ここで自分が相手を見ている立場だったとして、その人に声をかけるかどうかを考えると、やはり不機嫌そうな人は避けるでしょう。
 そう考えると、知らない人に道を聞かれたり、道端で話しかけられたりする人は、不機嫌そうに見えている度合いが少ないはずなので、自分の見られ方を測る一つの物差しになるのかもしれません。

 年令と見た目の印象の問題は、正直どうしようもない部分があります。
 「こわもて」と言われるような俳優は、若手よりはある程度年令が行った人の方が多いですし、不機嫌そうな見た目を、「威厳」や「貫禄」ととらえる感じ方もあり、それにはやはり年の功が必要なところです。

 ただ、斎藤教授の著書では、「今の時代は貫禄なんてない方が、相手にプレッシャーを与えずに良かったりする」という話もありました。
 話しかけやすさは、仕事がスムーズさや組織のパフォーマンスに直結するので、「上司が機嫌良くいるのは、今や職務だ」とされていました。

 私がこれまで多くの組織を見てきた中でも、この点はまったく同感です。みんなが明るく穏やかで和気あいあい、ただし決して緩んでいる訳ではない、適度な緊張感を持った組織が、最も成果が上がります。
 不機嫌な空気は伝染し、それは他のメンバーの行動やコミュニケーションを躊躇させるので、良い影響は何もありません。不機嫌の元凶がリーダーだったりすれば、この伝染力はさらに強まり、組織のパフォーマンスは低下していきます。

 「機嫌良くいるのが職務」であり、「年を取るほど不機嫌に見える」となれば、特にリーダーは、機嫌よく見える存在でいられるように、意識して振る舞わなければなりません。
 一般的に不機嫌に見えるのは、喜怒哀楽の中では「怒」の感情なので、それだけを抑えればすむはずですが、「普通にしていても不機嫌に見える」ということになると、意識して「喜」と「楽」の感情になれるようにコントロールしなければなりません。

 これは個人の性格もあるので、難しい人もいるのかもしれませんが、結局のところは自分がカリカリせず、怒らず、追い込まれないように、穏やかな感情でいられるように心がけるしかありません。

 仕事の上でも、さらに普通の生活の上でも、いつも機嫌がよく「話しかけられやすい人」の方が、得することが多いのは間違いありません。
 特に中高年男性は、「普通のままでは不機嫌に見える」ということを、認識しておく必要があるでしょう。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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