W杯ロシア大会、早くもPK数が過去最多に VAR導入のメリットとデメリット

2018年6月26日 21:51

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■VAR判定について

 サッカーのワールドカップロシア大会、イラン対ポルトガルの試合中に2回のPK判定があった。これにより、今大会のPK数は20となり、グループリーグも終わらない段階でPK数の最多記録を更新した。この背景にあるのはVAR判定(ビデオ・アシスタント・レフェリー)である。今大会からレフェリーはPKなど得点に絡むシーンの検証についてはビデオを確認し判定することができる。

 プレーの流れの中でホイッスルを吹かなくてもピッチ外のモニターを見てPKを宣告するというシーンが目立っている。今まではペナルティーエリア内でファウルを取らなかったようなシーンでもビデオ判定をし、PKを宣告するという流れが多い。

 VAR導入のいい点はレフェリーがあいまいな状況でPKを宣告することがないということだ。何度もプレーを見返した後にPKとするためファウルを犯した選手も納得することが多く、レフェリーに詰め寄るという光景はあまり見られない。

■VARのメリット

 上記のようにレフェリーは得点シーンに絡む判定の際ビデオで確認することができるため明らかにミスジャッジが減った。そのためレッドカードの枚数が減り、大きな乱闘が起こるといったシーンは見られない。

 さらにゴールラインテクノロジーも今大会では大いに役に立った。フランス対オーストラリアで、ボールがゴールラインを越えたか超えていないか微妙な場面があった。これはゴールラインテクノロジーにより「ボールがゴールラインにかかっていない」という判定が機械的に行われたため、文句なしのゴールとなった。

■VARのデメリット

 しかしながらデメリットもある。まず今大会のPK数が物語るようにいったん試合を止めてビデオを見ると、ファウルを取る割合が多すぎるという傾向にある。これまでは「ファウルかもしれない」という曖昧な場合はPKを取らない傾向にあった。もしくはよほどわかりやすいファウルでないとプレーを流していた。

 しかし今大会はちょっと足が引っかかっているという状況でもすぐにPKにしてしまうきらいがある。これではディフェンスが強く当たることができない。今大会は格下の国が善戦している試合が多いが、こういった背景も影響している。

 さらにVARに対してレフェリーが慣れていないということもある。今大会から「VARを導入します」と言ってもレフェリーがそれを使いこなせていない場面も見受けられた。

 今まではファウルを取られていなかったディフェンスがいきなりファウルをバンバンとられてしまうようになれば、どうだろうか。いつものプレーはできず、質の高いディフェンスはできなくなる。攻撃も「とりあえずペナルティーエリア内にボールを運べばPKが取れるかもしれない」という発想になりかねない。

 決勝トーナメントまでにはこういったメリット、デメリットを整理し、選手もレフェリーもこのシステムにより慣れる必要があるかもしれない。

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