眠気の生化学的な実体とは何なのか 筑波大の研究

2018年6月21日 18:40

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Sleepy変異マウスと断眠させたマウスの2種類の眠気モデルマウスの脳を比較したところ、眠気の程度に応じて80種類の蛋白質群SNIPPsのリン酸化が変化していた。(画像:筑波大学発表資料より)

Sleepy変異マウスと断眠させたマウスの2種類の眠気モデルマウスの脳を比較したところ、眠気の程度に応じて80種類の蛋白質群SNIPPsのリン酸化が変化していた。(画像:筑波大学発表資料より)[写真拡大]

 人間は人生の三分の一ほどの期間に渡って眠る。眠りというのは極めてありふれた現象であり、謎など無いように見えるかもしれない。しかし、実は科学的には、睡眠というのは極めて謎の多い現象であり、例えばその生化学的な実体についてはよく分からないことが多い。しかし今回、筑波大学は、睡眠要求を規定しているリン酸化蛋白質群を同定することに成功したという。

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 さて、眠りについて何が分からないか。色々あるのだが全容はここでは語りかねるので、今回の研究に関することに絞って説明すると、「眠気とは何なのか」ということである。主観的には、眠気というのは容易に体験される現象であるが、それが脳内のどのような物質あるいは機構によって実現しているものであるのか、その実態はまったく分かっていないと言ってよいのである。

 もちろん「眠気を感じているマウス」を実験によって強制的に作ることはできる。だが、それを外部から強制した時点でその刺激がストレスになってしまい、そのストレスと眠気そのものの実験的な区別ができない。そういうジレンマがあったのだ。

 さて、今回の研究では、断眠によって眠気を強まらせたマウスと、Sik3 遺伝子に変異を持つ Sleepy 変異マウスが用いられた。これはどういうマウスであるかというと、覚醒中に速やかに眠気が強まるという性質を持ったマウスである。この2種類のマウスを用意し、脳内で共通的な生化学的変化がないかを網羅的に解析したところ、80種類のタンパク質において、「リン酸化」が進行していることが分かった。

 そして断眠時間が長くなるほどに、これらのタンパク質群のリン酸化は進行していたという。このタンパク質群は、研究グループによってを睡眠要求指標リン酸化蛋白質 SNIPPs(Sleep-Need-Index-Phosphoproteins)と命名された。

 なお、研究の詳細は、Natureのオンライン版に公開されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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