乃木坂46版『ミュージカル美少女戦士セーラームーン』が前途多難?

2018年6月13日 19:42

印刷

 6月8日より、天王洲銀河劇場で上演されている『乃木坂版 ミュージカル美少女戦士セーラームーン』がまずまずの評判だ。

【こちらも】乃木坂メンバー出演の舞台『三人姉妹』の評価

 この舞台はセーラームーン25周年プロジェクトの一環として、乃木坂46より選ばれた10名のメンバーが、二つの組に別れて上演するというもので、世界的に評価の高いウォーリー木下氏が演出を担当しているもの。

 乃木坂46が舞台を重視し、メンバーの多くが舞台経験を積み、そこで高い評価を残してきていることはここでも何度か話題にしてきたが、この舞台はある意味でその集大成になる可能性も高い難しいチャレンジになっている。

 というのも、まず『美少女戦士セーラームーン』の25周年記念であり、元々のファンは女性が圧倒的に多いということ。さらに、この作品のミュージカルは、バンダイ・ネルケで何度も上演されており、女性のセーラームーンファンの見る目が非常に厳しいということだ。

 乃木坂メンバーが多数出演する舞台は、どうしてもメンバー目当てのファンが多くなるし、ホーム感が強くなるものだが、今回は多くのメンバーが出演しているにも関わらず、演技力や演出に厳しい原作ファンによるアウェー感がぬぐい切れない。

 また、8日にテレビでゲネプロ(最終の通し稽古)の様子が流れたのだが、その中で山下美月(3期生・Team MOON・セーラームーン役)の歌が稽古での調整中のまま流され、かなり音程にブレがあったことで、ネットを中心にかなり批判が出てきていたという背景もあった。

 しかしながら、蓋を開けてみれば、彼女たちの演技と演出はネガティブな下馬評を覆すものだった。

 初日の舞台を見たという人からは、観客の男性率の多さ(7割前後という話だ)には驚いたが、心配された山下美月の歌も無難にまとめられていたし、何よりも脚本が素晴らしかったこと、乃木坂のメンバーが完全に美少女戦士だったこと(ようするに漫画のような造形・スタイルだったとか)、変身の演出がすごかったことなど、クレームらしいクレームは見当たらなかったのである。

 記者はTeam STAR(セーラームーン役は井上小百合)の回を見に行ったのだが、こちらも素晴らしい出来で、確かに生足目当て(?)の男性客もいたような気がするが、舞台として満足できる内容だった。

 もっとも印象に残ったのはセーラージュピターを演じた梅澤美波である。

 乃木坂随一のスタイルの良さを活かしたダイナミックな殺陣はひときわ美しく、感情を表情で伝える力量もしっかり伝わった。

 さらに、セーラームーン役の井上小百合は、乃木坂内では舞台経験豊富な実力者だが、フレッシュさは全く衰えず、キャピキャピした月野うさぎを完全に演じきっていた。

 なお客層は8割ぐらいが男性で、おそらくが乃木坂ファンであったと思うが、観劇マナーはよかったように思う。

 この調子で最後までのりきることができれば、乃木坂が初期からコンセプトの一つにしていた、アイドルから実力派舞台女優へのレールはより強化され、卒業後の展開も拓けていくだろう。

 まずは、体調をしっかり管理して、最後まで乗り切ってほしいものだ。(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事