三井住友建設、腐食しない世界初の橋梁で載荷試験 四半世紀経過も性能維持

2018年4月26日 22:01

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建設当時の実証橋(写真:三井住友建設の発表資料より)

建設当時の実証橋(写真:三井住友建設の発表資料より)[写真拡大]

  • アラミドFRPロッド(写真:三井住友建設の発表資料より)

 三井住友建設は24日、腐食しない素材アラミドFRPロッドを用いて1990年に建設した世界初のプレストレストコンクリート(PC)橋について、その一部を撤去し曲げ載荷試験を行い、四半世紀以上経過してもアラミドFRPロッドは所定のプレストレス力を有し、PC橋は建設時に計画した通りの性能を有していることを確認したと発表した。

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 地震大国日本、東日本大震災では想定を超える地震動により構造物に甚大な被害が発生した一方、阪神淡路大震災の教訓を踏まえた耐震補強を実施した橋梁では、落橋などの致命的な損傷を回避し震災後の早期復旧に寄与した事例もある。

 このように、過去の教訓を踏まえた対策が叫ばれるが、河川内などの橋脚では補強工事に大規模な仮設備が必要で、費用も工期も増大することから、耐震補強が遅れているのが現状という。

●アラミドFRPの特長

 アラミドFRP緊張材は厳しい腐食性環境でも全く錆びず、PC鋼材と比較して同等の引張強度を有しながら、引張弾性率は約4分の1、比重は6分の1に抑えられる優れものだ。

 高張力繊維であるアラミド繊維をビニルエステル樹脂で固めてロッド状に加工。PC橋に用いるアラミドFRP緊張材を開発したのは1980年代だ。このアラミドFRPロッドを用いて1990年にPC橋を建設。四半世紀を経て、橋の一部を撤去し曲げ載荷試験を実施し、効果を確認した。

●PC橋(三井住友建設、アラミドFRP)のテクノロジー

 四半世紀という長い期間の試験を筆者は聞いたことがない。驚き以上に技術者の執念を感じる。

 四半世紀を経て、アラミドFRP緊張材を用いたPC橋の主桁3本のうち、撤去した1桁を用いた曲げ載荷試験を、支間長など実証橋と同条件のもとで実施。試験データからアラミドFRP緊張材の残存プレストレス力を算出した結果、計画通りの緊張力と曲げ破壊耐力を有していることを確認。

 アラミドFRP緊張材が破断した際の荷重から評価を行った結果、アラミドFRPロッドは設計時の引張強度を有しており、四半世紀以上経過していても建設時と同等の性能を維持していることを確認。

 今回の発表は、四半世紀の試験に耐えた、腐食しない素材アラミドFRPに関するものであり、耐震補強の朗報となるであろう。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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