凸版、100倍の急速充電達成で二次電池事業に参入 印刷技術で新電極

2018年3月16日 07:56

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専用電極を用いたエクセルギー電池(写真:凸版の発表資料より)

専用電極を用いたエクセルギー電池(写真:凸版の発表資料より)[写真拡大]

 凸版印刷と東大発のベンチャー企業エクセルギー社が、次世代電池事業に参入する。

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 凸版印刷は14日、次世代二次電池「エクセルギー電池」を手がけるエクセルギー社と2月9日に資本業務提携を締結し約5億円を出資、エクセルギー電池事業の共同推進に合意したと発表した。

 エクセルギー社は、凸版印刷が独自開発した専用電極を用いてエクセルギー電池を開発。一般的な二次電池の約100倍の急速充放電が可能だ。この特長は、従来常用電源からの大電力供給が必要だった医療機器や、一般的な二次電池では実現が困難だった高出力の回生電力の充電を活用した重機などへの適用が可能という。

 4月からサンプル出荷を開始し、2020年度の量産を目指す。

 モバイル市場やEV市場、その二次電池市場の主役はリチウムイオン電池だ。その市場に敢えてニッケル水素電池で挑むというのが今回の発表である。狙いは、リチウムイオン電池では難しい低価格化、急速充放電、そして急速充放電の特長を活かした小型化であろう。

●エクセルギー電池の特長

 一般的な二次電池の100倍の急速充放電だ。それを支えるのは電池内部で発生した熱を急速に放熱。上昇温度を5度以内に抑える技術だ。

 高い耐久性も実現。電池内部に水素を封入し、酸化による電極の劣化を抑えることで、一般的な二次電池の10倍のサイクル寿命15万回を達成。

 また安全性も重要だ。材料にリチウムや有機溶剤などを使用していないため、電池の発火や爆発の心配もない。

●二次電池(凸版印刷とエクセルギー社、エクセルギー電池)のテクノロジー

 急速充放電の障壁は発熱の問題だ。発熱は充放電により発生するが、急速であるほど温度が急上昇する。小さな体積に多くのエネルギーを蓄積するリチウムイオン電池は、発熱への課題が付き纏う。エクセルギー電池は、温度上昇を5度以内に抑えて、急速充電を実現した。

 その電池の構成は印刷技術を応用した積層のようだ。印刷技術を応用し、電極材料の導電性インキでニッケル系基材をコーティング。正極、負極、セパレータを積層し電池セルを形成するという。

 急速充放電では、電池の残量が底をつくところで、一気に残量を回復できる。電池切れの心配が少なく、蓄電システム全体の容量を小さく設計可能だ。これと低コストを踏まえると、リチウムイオン電池に十分対抗できると踏んだのであろうか。

 急速充放電は重機などのコスト削減に貢献する。例えば、フォークリフトなどの重機は、充電時間が8時間程度掛かることから稼働率を上げるために複数台用意する必要があるという。充電時間が100倍ならば5分で充電が完了する。

 急速充放電の特長が活かせる重機などの市場から開拓し、2025年に100億円の売上を目指す。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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