トラック運送業界の景況感、2014年以来の改善も人手不足で厳しい見通し

2018年2月14日 06:48

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 全日本トラック協会の発表によると、トラック運送業界における景気動向が改善しているものの、人手不足などにより今後の見通しは厳しいことが分かった。

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■2014年1月~3月期以来の景況感プラス

 9日、全日本トラック協会が2017年10月~12月期における「トラック運送業界の景況感(速報)」を発表した。これは1993年3月から3カ月ごとに行っている調査で、今回は1月末までに寄せられた580業者の回答を集計している。景況感を「好転」と回答した企業割合は26.2%(前回17.9%、以下同じ)、「悪化」は22.6%(29.0%)となった。判断指標は、前回の-12.7から今回は2.2となり、14.9ポイントの大きな改善となっている。景況感がプラスとなったのは、2014年1月~3月期以来のこと。

■運賃・料金は高い水準が続くが利益にはつながらず

 一般貨物の概況では、輸送数量や営業収入が増加と答えた割合が増えたものの、営業利益では「大幅に増えた」(前回0.9->今回1.1、以下同じ)、「増えた」(22.6->22.7)が微増に留まっており、「やや減少」は微増(27.2->27.7)、大幅に減少は微減(4.8->4.4)と、利益に結びついていないことが分かる。運賃・料金の水準では「大幅に上昇」(0.4->0.4)は横ばいながら、「やや上昇」が増加(15.3->19.4)しているが、後述する人手不足などがコスト増加となっているようだ。

 特積貨物の宅配貨物では、輸送数量は「やや減少」が大きく増加(14.3->39.3)、「大幅に減少」も増加(7.1->10.7)しているが、営業収入では、「横ばい」が増加(32.1->41,4)し、「やや減少」(17.9->17.2)と「大幅に減少」(10.7->10.3)は微減に留まっており、数量の減少が必ずしも収入の減少とはなっていないようだ。ただし営業利益では、「大幅に増加」(3.6->3.4)や「増加」(25.0->24.1)が微減だった一方で、「やや減少」が増加(17.9->27.6)となり、こちらでもコスト増が垣間見える。

 運賃・料金の水準を見ると、一般貨物では「やや上昇」(15.3->19.4)が増えており、見通しでも「やや上昇」(22.7)と答えた割合がさらに増えている。特積貨物の宅配貨物では、「大幅に上昇」こそ減った(10.7->6.9)ものの、「やや上昇」は増加(46.4->69.0)し、「横ばい」は減少(42.9->24.1)しており、「やや下落」「大幅に下落」はゼロとなっている。見通しでは「やや上昇」(51.7)は減り、「横ばい」(37.9)が増えるものの、強めの水準が続くようだ。

■人手不足はさらに悪化傾向

 実働率や実車率は、ともに「上昇」が増えるものの、見通しでは「上昇」が減り、「横ばい」「低下」が増えている。ここで注目したいのが雇用状況だ。「不足」(前回21.1->今回29.7->見通し34.1、以下同じ)と「やや不足」(41.5->42.6->43.1)が増え、「適当」(35.4->26.7->21.9)が減少、「やや過剰」(1.6->0.9->0.9)や「過剰」(0.3->0.2->0.0)との答えは微々たるものになっており、現場の人手不足は明らかだ。

 にもかかわらず、採用状況を見ると、「大幅に増加」(1.6->0.5->1.0)、「増加」(16.4->16.2->16.0)となっており、採用に意欲的な様子は見られない。もっとも、「人を集めるだけの給与が出せない」「高め給与の募集を出しても人が集まらない」「さらに先を見越して積極的に採用できない」など、いろいろ理由がありそうだ。

■見通しは再びマイナスに

 資料では、2008年以降における各指標の推移を見ることができる。最初にあげた景況感を始め、運賃や収入では、かろうじて改善の傾向が見られるものの、実働率や実車率は横ばい、雇用状況(労働力の不足感)は悪化、採用状況もやや悪化する傾向にある。

 冒頭に「今後の見通しは、燃料価格上昇や運転者の人材不足等が継続して影響することから、経常損益は悪化傾向となることが見込まれるため、今回から7.7ポイント悪化し、▲5.5となる見込み」とある。こうした厳しい見通しをどれだけ払拭できるかが注目したい。(記事:県田勢・記事一覧を見る

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