好景気なのになぜ、希望・早期退職者募集が増える?東京商工リサーチ調査

2018年1月22日 06:55

印刷

東京商工リサーチは19日、主な上場企業の「希望・早期退職者募集状況」の調査結果を発表したが、それによると、好景気で人手不足が深刻さを増す中で、希望・早期退職者を募った上場企業数が5年ぶりに前年を上回るという実態が浮き彫りされた。この調査は、2017年に希望・早期退職者募集の実施を情報開示し、具体的な内容を確認できた上場企業を抽出して実施した。希望・早期退職者の募集予定を発表したものの、まだ実施に至っていない企業、および上場企業の子会社(未上場)は対象から除外した。ー

【前年は】希望・早期退職募集公表の主な上場企業、16年は18社で2000年以降最少

調査結果によると、2017年に希望・早期退職者募集の実施を公表した主な上場企業は25社となり、前年の18社を上回った。希望・早期退職者募集を実施した上場企業は、リーマン・ショック直後の2009年は191社にのぼったが、円安進行で輸出産業を中心に大手企業の業績が好転した2013年から減少傾向をたどり、2016年は調査を開始以来、最少の18社にとどまっていた。

2017年の募集人員が最も多かったのは、ニコン(グループ会社を含む)の1000人。次いで、スズケン(同)の350人、ジャパンディスプレイの240人、スリーエフの180人と続く。

募集および応募人員が100人以上は8社(前年8社)だった。また、業種別では、日立国際電気、ジャパンディスプレイ、ウシオ電機など電気機器が8社と最も多かった。次いで小売が3社と続いている。

2017年に希望・早期退職者募集が前年を上回ったのは、業績不振から人員削減に踏み切った企業に加えて、好景気による業績好調のときに、将来のビジネス展開を見据えて既存事業の構造改革を進める「攻めの経営戦略」基づくものとされている。通常、希望・早期退職者を募集するのは、景気が悪化し、業績不振に陥ったときが一般的である。しかし、比較的好景気の現在、募集に踏み切るのは「人手不足で退職者の転職がしやすいため」という判断があることによる。とくに有効求人倍率が高水準に推移し、雇用環境が好転していることが、企業の人員削減や、組織のスリム化の追い風になっていることを見逃せない。

東京商工リサーチでは、「今後も、企業競争力を高めるための“攻めの戦略”に基づく人員削減の動きが続きそうだ」と指摘している。(記事:南条 誠・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事