エアバスA380生産中止か?(上) MRの失敗B787に敗れる 短命な巨人機に

2018年1月22日 06:04

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エアバスA380。(c) 123rf

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■巨人機短命に終わる

 エアバス社のリーヒー最高執行責任者(COO)は、大型旅客機A380に関して、「エミレーツ航空からの追加発注がなければ、生産中止を考えざるを得ない」と語った。エミレーツ航空はエアバスA380の全受注機数317機の内、142機を発注している大口顧客だ。昨年エミレーツ航空は追加発注を検討したが、実現しなかった。(※その後、エミレーツ航空は最大36機の追加発注を発表している)

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 エアバスA380は、2階建て座席のレイアウト次第では1000人乗りとすることができる、人類最大の旅客機だ。2005年4月27日初飛行。2017年12月末時点、317機/18社から受注し、222機が引き渡し済み。受注残95機となっている。日本の航空会社では、全日空(ANN)が3機導入予定だ。2019年に成田発ホノルル行きに就航する予定。エアバス社は月産3機の予定だったが、月産1機に減産する。価格は約494憶円で1.99%値上げされているという。これはカタログ価格だ。

航空機の寿命は大変長く、軍用機でも民間機でも半世紀(50年)ほど先の需要予測で運命が決まる世界だ。現在、世界の空で活躍している航空機はいずれも、開発を始めて半世紀を超えている。エアバスA380は、かなりの短命に終わることになる。

■航空機市場の読み違い MRの失敗B787に敗れる

 ボーイングは747型機で長い間、ジャンボ機の王者として君臨してきたが、エアバスA380開発に当たっては、ボーイング787を開発することにして対抗することとした。この背景にはボーイング社の航空機市場での周到な読みがあり、今後、A380のような巨人機は当分需要が下がるとみていた。

 これは世界の航空機路線の変動に対する20年前の両社の読みの違いであった。いわゆるハブ空港まで飛んで、そこで乗り換え小型機で目的の空港へ飛ぶ乗り方に対応しようとしたのがA380である。しかし、客の利便性から考え、またコストを決める燃費に関する技術的進歩を踏まえると、世界の各空港へは、ハブ空港を経由せずに直行便が増えると予測したのがボーイングだった。

 理論的には客の利便性は、直行便でも便数が多いほうが良いのだが、1便当たりの乗客数が多いほど採算はよくなる。そのため離島便など1週間に1便などとなる場合がある。それを2便に増やしてもコストを吸収するだけの燃費の良さが必要だ。

 そのためB787は徹底した軽量化を果たし、燃費の良いエンジン2基で経済性を追求した。B787の7割は日本製と言われるほど、日本の技術力が貢献しているのだが、A380にも日本のカーボン素材が使われている。たしか2階建ての床の柱に使われていたはずだ。B787は、胴体の一部は丸ごとカーボンで造られ、焼き固める大きな窯も日本製だ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続き: エアバスA380生産中止か?(下) 自動車産業の半世紀後の運命 MRの失敗はないのか

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