東北大とコニカミノルタ、脳磁場を安価に計測できる高感度センサを開発

2017年11月25日 22:20

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TMR磁気センサを用いた脳磁計の概念図(写真:東北大学の発表資料より)

TMR磁気センサを用いた脳磁計の概念図(写真:東北大学の発表資料より)[写真拡大]

 東北大学とコニカミノルタは24日、室温で簡便に動作する、高感度かつ高分解能のトンネル磁気抵抗(TMR)素子生体磁気センサ(以下、TMR磁気センサ)を開発し、脳活動の一つであるα波の検出や心磁場の検出に成功したと発表した。

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 脳内の活動を知るためには電気測定による脳波計測が一般的だが、これは頭皮の表面を測定しているだけで、脳内のどこで活動が起きているかを直接的に知ることはできない。

 一方、脳内活動により発生する磁場を測定すれば、脳内のどこでどのような活動が起きているかの詳細を知ることができるが、現在の脳磁場計測装置は巨大でかつ非常に高価な装置しか存在していない。

 今回の成果は、TMR磁気センサの感度を高めることにより、世界で初めて、簡便かつ安価に脳磁信号を検出した画期的なものという。

●TMR磁気センサの特長

 室温で動作する多数のTMR素子をアレイ状に集積して、高感度磁気センサとして用いた。生体磁場は低い周波数信号であり、低周波領域での高感度かつ低ノイズの素子が求められるという。今回、TMR素子の低抵抗化、形状やアレイ構造を最適化、および生体磁場計測に特化した低ノイズアナログ回路を開発したという。

 低周波数の領域(1~50 ヘルツ)でのノイズは420ナノボルトと小さく、α波や心磁場の検出を可能にした。

●生体磁場計測(東北大とコニカミノルタ、TMR磁気センサ)のテクノロジー

 本成果を契機として、室温脳磁場計測の研究が加速的に進展するという。

 脳磁図の応用では薬剤抵抗性てんかんの術前治療が、心磁図の応用では不整脈、狭心症、心筋梗塞部位の診断精度が向上し、安全に術前評価が可能になるという。

 さらにTMR磁気センサの感度が向上すれば、様々な脳磁場計測への展開が期待できる。例えば、脳梗塞の初期診断、アルツハイマー病などの認知症の診断、精神疾患の診断などに応用可能だという。

 TMR磁気センサを用いた脳磁計による安価な計測が可能になれば、脳ドックのような健康診断装置としての普及やウェアラブルデバイスとしての応用も視野に入るのであろう。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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