オストメイトに優しい片倉工業

2017年10月18日 16:32

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 片倉工業というとまず頭に浮かぶのは、世界遺産に認められた「富岡製糸場」の民間最後のオーナー企業だったという歴史的事実である。

 同社は1873年(明治6年)に繊維業を祖業に設立された。爾来150年近くが経ついまは繊維業・医薬品業・不動産業などなど、事業範囲を広げている。「健康、安全・快適、環境との共生を実現する企業集団を目指し、新しい『成長の芽』を創り出す」という、経営ビジョンが脈々と流れ続けている結果と言えよう。

 そんな同社がいま注力している商品が『いい安座』。昨年度までの前中計で「健康に紐づく分野として、介護・福祉事業への進出」が打ち出された。「いい安座」は具現化第1弾の商品である。

 オストメイト。癌等の病や事故で大腸などが損なわれ通常の排泄ができない人。全国に20万人とも30万人とも存在しているとされる。そんな人達は腹部に排泄のための開口部を設け、排泄物はパウチに溜められる。溜まった汚物は流さなくてはならない。オストメイトマークが付けられた公共機関等の専用トイレも増えつつある。だが現状ではスペースや設置コストの問題から整備状態は道半ば。

 片倉工業が専用トイレとして「いい安座」を開発・発売を始めたのは2015年11月10日(いいトイレの日)。この時点ではまだパウチを取り扱う業者を代理店としての家庭販売が主だった。だがオストメイトの人達には、その範囲では「外出先の不安」が解消されない。同社は改良も加え今年7月にパブリック仕様の「いい安座」の発売を開始した。新規事業部の面々は病院やショッピングセンター等の施設、オフィスビル、電鉄会社、空港会社をとにかく訪ね回り「設置」を進言して歩いた。「通常の便座より奥行があり深く腰掛けられることから、便座の前の部分が広く空くため座ったままでパウチの処理ができる」「便座のみの交換で済むため、一般個室トイレにも設置が可能」と説きつつである。徐々に公的機関での認識が深まり始めた時点で、ドラッグストア大手のウェルシア薬局の全店への導入が決まった。

 片倉工業の「成長の芽」創りは、立ち止まらない。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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