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“経済的格差”とうつ病傾向を結ぶ機能を解明 NICT研究グループ

2017年10月9日 18:17

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記事提供元:エコノミックニュース

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)脳情報通信融合研究センター(CiNet)の春野雅彦研究マネージャーらの研究グループによって、現代社会が直面する最も深刻な課題の一つである経済的不平等(格差)の拡大と、うつ病などの精神疾患との関連性について先進的な知見が発見された。

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)脳情報通信融合研究センター(CiNet)の春野雅彦研究マネージャーらの研究グループによって、現代社会が直面する最も深刻な課題の一つである経済的不平等(格差)の拡大と、うつ病などの精神疾患との関連性について先進的な知見が発見された。[写真拡大]

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 世界保健機関(WHO)は、世界でうつ病に苦しむ人が2015年に推計3億2200万人に上ったと発表した。これは全世界人口の約4%に当たり、05年から約18%増加した。うつ病は世界的に一般的な精神疾患になりつつあり、若年層の自殺増にもつながっているとして、早急な対策が必要だと指摘した。

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 日本においても、自殺者の健康問題における動機の内約で最も多いのが「うつ病」だ。行政法人労働政策研究・研修機構が2012年に実施した調査によると、企業を退職する理由のトップ3に「メンタルヘルス」がある。精神疾患にかかり医療機関を受診した際にかかる医療費や、精神疾患にかかってしまったことで休職・離職し、本来得られたはずの労働利益(つまり労働損失)を考えた場合メンタルヘルスによる経済的損失は多大であるといえるだろう。

 そういった社会背景のなか、現代社会が直面する最も深刻な課題の一つである経済的不平等(格差)の拡大と、うつ病などの精神疾患との関連性について先進的な知見が発見された。

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)脳情報通信融合研究センター(CiNet)の春野雅彦研究マネージャーらの研究グループによれば、扁桃体と海馬の“経済的な不平等(自分と相手の配分の差)”に対する脳活動から、被験者の現在のうつ病傾向と1年後のうつ病傾向を予測できる、という。これまで、国内外の疫学研究により、経済的不平等とうつ症状の因果関係は示唆されてきたが、その脳内メカニズムは不明だった。2010年に春野研究マネージャーらは、大脳皮質下に位置し、感情を司る扁桃体が“不平等”に対して反応し、その脳活動が自分と他者とのお金の配分の違いを説明することを明らかにした。

 一方、扁桃体と海馬は、視床下部と共にストレス物質の放出に関与し、うつ病患者では、扁桃体と海馬の脳活動と体積が健常者とは異なることが知られており、これらの知見から、不平等に対する扁桃体と海馬の脳活動とうつ病傾向の変化が関係するとの仮説を持ったことが、今回の実験に繋がった。

 今回被験者に行った実験は、MRI装置の中で、相手から提案されるお金の配分を受け入れるか拒否するかを判断する“最終提案ゲーム”と呼ばれるもので、その目的は、自分と相手の配分の差に対する感情の働きを調べることである。扁桃体と海馬の中の微小な場所が“不平等”に反応して作る脳活動パターンから予測をする機械学習技術を考案することで、うつ病傾向の予測を試みた。その結果、現在のうつ病傾向と1年後のうつ病傾向の両方が予測可能であることが分かった。

 これらの実験結果は、扁桃体と海馬が果たす重要な役割を示唆しており、不平等とうつ病をつなぐこの知見は、うつ病の長期の病状予測やうつ病症状の脳活動に基づく分類などヒトの気分変動のより深い理解への貢献が期待されており、今後は、今回考案した機械学習技術を更に発展させることで、長期のうつ病傾向の予測精度を向上させること、現在は一括してうつ病とされている症状群の脳情報処理の違いの理解が進むことなどが期待されている。(編集担当:久保田雄城)

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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。

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