【立つ鳥跡を濁さず】豪州トヨタ54年間の製造に幕 経営者必読 今後も地域社会貢献

2017年10月4日 20:28

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アルトナ工場で行われた生産終了式典の様子。(写真: トヨタ自動車の発表資料より)

アルトナ工場で行われた生産終了式典の様子。(写真: トヨタ自動車の発表資料より)[写真拡大]

  • TMCAの様子。

 トヨタのオーストラリアでの製造・販売を行っているToyota Motor Corporation Australia Ltd.(TMCA)は10月3日、54年間に渡った生産を終了した。トヨタでは、今後も地域社会に貢献するため豪州トヨタ財団を設立し、学生への奨学金支給をはじめ、地域の次の人材育成などを行っていく予定だ。

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 生産終了決定後、トヨタは再就職のあっせんなど、きめ細かい支援を続けてきており、社員、元社員、取引先など関係者を集めてTMCAのデイブ・バトナー社長が感謝の意を述べた。豊田章男社長は8月に現地を訪れて直接感謝の意を伝えたが、当日もビデオメッセージを寄せて、関係者に感謝の意を伝えた。

 トヨタはTNGAに基づいて生産拠点を整理しているのであろうが、販売拠点でもある豪州に禍根を残さず撤退するため、周到な準備を重ねていたようだ。これからもトヨタ車の市場となるとはいえ、民間企業の撤収作業の見本ともなる姿勢だ。昨今のアメリカファンドの「売り逃げ」の姿勢と対比してみておくことが必要であろう。

 ファンドの理屈では、「投資効率」のためであるなら「労働基準法違反」は当たり前とばかりに、資金回収を最優先とする。これは世界規模で行われていることで、小国ではファンドの力が政権の力を上回り、国民は無政府状態に置かれることもあるようだ。

 トヨタは、生産終了は仕方がないとしても、従業員の再就職をあっせんし、財団をつくり今後も地域の支援を続けていく方針である。これは「長期的投資」であり、豪州国民と良好な関係を維持して、これからもトヨタの車を愛してくれることを願ってのことである。

 企業が閉鎖となった時には、社員が「手のひらを返したように」反抗的になることもある。そうならないように撤収する際には、従業員の再就職に関して、きめ細やかな対応をすることが肝心だ。就職情報などの提供はもちろん、社員個別の事情があるのが当然なので、一人一人の相談に乗り、これからの人生の手助けをする必要がある。トヨタは職業訓練なども行えるので、混乱を最小限に収めることが出来たのであろう。

 筆者は企業の撤収作業を経験してきたが、一つだけやり忘れたことは、トヨタのように地域の今後に対しても貢献する方策を打ち出すという点だ。小さな会社では難しいことだが、その地域に対して何らかの謝意を表す今後の施策を考えるべきであった。去りゆくものに鞭打つ習慣が人間社会にはあり、それを放置することなく処理するには、トヨタの財団設立は参考になろう。

 (1)従業員の再就職(2)地域に貢献すること(3)取引先に迷惑を掛けない始末を付けることが、「立つ鳥跡を濁さず」の秘訣のようだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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