抗がん剤が心筋の委縮を引き起こす機序を解明、副作用低減に期待

2017年8月8日 12:27

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 生理学研究所、九州大学、群馬大学、東京大学、京都大学による共同研究グループは、抗がん剤投与によって発現する心筋細胞膜のTRPC3チャネルが活性酸素を発生させ、心筋細胞の委縮を招くメカニズムを発見、さらに、TRPC3チャネルを阻害する化合物が抗がん剤誘発性心不全を軽減することを明らかにした。

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 言うまでもなくがんは現代日本にとって最も重大な疾患の一つであり、そして抗がん剤治療(化学療法)は、手術、放射線治療と並ぶ「がん治療の3本の柱」の一つだ。

 しかし、化学療法には、筋力低下による疲労感、倦怠感、廃用症候群(寝たきり)、心筋症などの副作用があることもよく知られている。

 この事実は経験的にはよく知られていたが、抗がん剤がなぜ筋力低下を起こすのか、という具体的なメカニズムはこれまで詳らかでなかった。

 TRPC3とは、transient receptor potential canonical (TRPC) 3、心細胞膜上に存在するカチオンチャネルである。高容量のアントラサイクリン系抗がん剤ドキソルビシン(商品名:アドリアシン)の投与時、このTRPC3が、TRPC3-Nox2タンパク複合体数を増やし、酸化ストレスを誘発することで心筋細胞を委縮させるという事実が、今回、マウスを用いた研究で明らかになった。

 また一方、TRPC3とNox2の相互作用を特異的に阻害するタンパク質を発現させたマウスにおいては、マウスの心筋委縮と心機能低下は軽減されることも明らかになった。

 総合すると、抗がん剤誘発性の新筋委縮の原因は、TRPC3-Nox2複合体形成にあったというわけである。

 今後の研究としては、抗がん剤の副作用を低減する薬品を開発し、併用療法を行えるようになることが期待できる。

 なお、研究の詳細は、アメリカの医学誌JCI insightのオンライン版に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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