新日鉄住金に続き神戸製鋼「ホットスタンプ」参入、進化する自動車軽量化

2017年3月4日 21:42

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記事提供元:エコノミックニュース

トヨタのハイブリッド車(HV)「プリウス」は、ホットスタンプ材を先行採用しており、先代の3%から19%へ大幅に増やし、軽量化に成功したという

トヨタのハイブリッド車(HV)「プリウス」は、ホットスタンプ材を先行採用しており、先代の3%から19%へ大幅に増やし、軽量化に成功したという[写真拡大]

 自動車を軽量化する鋼板に新しい選択肢が広がる。加熱してプレスすることで強度が出る「ホットスタンプ(熱間プレス)材」と呼ばれる鋼板で、神戸製鋼所が新たにこの分野に参入した。

 自動車の骨格を作っているボディモノコック部材の随所に高張力鋼板(ハイテン鋼)が使用されているが、鋼板を加熱して特殊加工して作られた超高張力鋼板が「ホットスタンプ材」だ。この超高張力鋼板は一般的な鋼板と比較して、約4~5倍の引張強度を持っており、板の厚みを薄くしても通常の鋼板を凌ぐ強度が得られる。

 日本でこれまで実質的に唯一、量産していた新日鉄住金も今後の需要増を見越し生産能力を約2割高める予定だ。自動車の燃費向上や、運動性能アップに欠かせないのが軽量化だ。そのため自動車のシャシーやボディにアルミニウムや炭素繊維など非鉄素材の採用が広がるなか、鉄鋼各社は一般的な鋼板でもハイテン(高張力鋼板)でもない「第3の鋼板」を品揃えして対抗する。

 新日鉄住金によれば、従来から行なわれている高張力鋼板を冷間でプレス加工して車体構造部品を製造する方法では、使用する鋼板が高強度になるほど、プレス加工時に発生した応力が金型から外される際に解放され、弾性変形する現象(スプリングバック)が起こり、寸法精度不良が生じる問題があった。

 が、ホットスタンプ技術は、このような問題を解決し、さらに強度の高い部品を製造するための技術だ。鋼板を約900℃に加熱して軟質化させた状態でプレス加工を行ない、同時に金型との接触に伴う冷却効果(接触冷却)により焼き入れを強化することで、引張強さと良好な部品の寸法精度を実現するという。

 神戸製鋼所はホットスタンプ材の量産を加古川製鉄所でスタートさせた。自動車の車体骨格部品向けに供給するという。トヨタが現行のハイブリッド車(HV)「プリウス」でホットスタンプ材を先行採用しており、先代の3%から19%へ大幅に増やした。今後、他のクルマにも幅広く採用していく構えだ。

 世界的な燃費規制強化への対応を急ぐ日本車各社は軽量化に向け「ハイテン」と呼ばれる特別な高張力鋼板の採用している。が、より強度のあるホットスタンプ材を使えば、ボディモノコックを約1割軽量化できるという。

 ホットスタンプ材を使うには、プレスの前段で使う加熱炉が必要だ。単位時間あたりに加工できる部品の数がハイテン鋼に比べて少ないのも難点だとされる。

 神戸製鋼所は鋼板の成分を工夫して生産性を既存の最大4倍に高めた。生産性ではまだハイテン鋼に分があるが、加工用に大型プレス機が必要なハイテンの投資負担減れば、コスト面の差は縮まったと判断、今回事業参入を決めたというわけだ。

 新日鉄住金は、北九州市の八幡製鉄所の生産能力を高め、年間30万トン規模とする。そこで生産したホットスタンプ材を欧州メーカーの中国の工場に供給する。また、国内自動車メーカーでの採用も見込んでいる。(編集担当:吉田恒)

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