京大研究者ら、がん細胞に高い殺傷力の免疫細胞をiPS細胞から作製

2016年11月25日 21:33

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記事提供元:スラド

 京都大学の河本宏教授らが、ヒトiPS細胞からがん細胞への高い殺傷能力を持つキラーT細胞を作製することに成功したと発表した日経新聞)。

 がん細胞に反応するキラーT細胞をがん治療に利用する研究は以前から進められていたが、高品質なキラーT細胞を効率良く増やすことは困難だったという。今回開発された手法は、iPS細胞を使ってT細胞を再生するという手法。この手法自体は2013年に開発されていたが、既存手法ではがん細胞への殺傷能力が弱い細胞しか作れなかったという。

 通常のキラーT細胞は「CD8αβ」という、標的となる抗原を認識するのを助ける分子を出すが、従来手法で作られた細胞はこれとは異なる「CD8αα」という分子を出すため、がん抗原を認識する力が弱かったという。今回開発された手法は、iPS細胞からT細胞を再生させる過程で、「CD4」と「CD8」という分子を共に出している段階の細胞(共陽性細胞)をそうでない細胞(共陰性細胞)から分離して刺激を加えるというもの。これにより、CD8αβを出すT細胞を効率良く誘導できるという。また、この段階の細胞を分離しない場合、刺激された共陰性細胞が共陽性細胞を殺しているためにCD8αβを出すT細胞が生成されないことも確認されたという。

 実験ではマウスを使った実験で治療効果を確認したとのこと。また、生体内で正常組織を傷つけず、投与した細胞自体ががん化しないことも確認できたという。

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