東大院生、星間空間の「ぼやけた星間線」を新たに15本発見

2015年2月17日 22:56

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今回、特に顕著なDIBを検出した「はくちょう座OB2星団」の赤外線写真(NASA)と、WINEREDで取得したはくちょう座OB2星団の星(No.3, 10, 12)のDIBのスペクトル(右下)(東京大学の発表資料より)

今回、特に顕著なDIBを検出した「はくちょう座OB2星団」の赤外線写真(NASA)と、WINEREDで取得したはくちょう座OB2星団の星(No.3, 10, 12)のDIBのスペクトル(右下)(東京大学の発表資料より)[写真拡大]

  • WINERED(上)と神山天文台荒木望遠鏡(下)の写真(東京大学の発表資料より)

 東京大学の濱野哲史大学院生らによる研究グループは、星間空間に存在する大きな有機分子による微弱な吸収線を新たに15本発見した。

 観測対象となっている星と観測者の間に物質があると、星から届くスペクトルは途中で吸収されて「吸収線」として検出される。これまで、既知の原子や小さい分子による吸収線に加えて、幅が太いという特徴を持つ「ぼやけた星間線」(DIB)が検出されているが、「ぼやけた星間線」を引き起こしている物質は未だにわかっておらず、天文学における最も古い未解決問題のひとつとして知られている。

 この解明のためには、赤外線による観測が重要となるが、分光器の性能などのさまざまな困難によって赤外線波長帯を用いた系統的な観測的研究はこれまでされていなかった。

 今回の研究では、京都産業大学神山天文台の荒木望遠鏡に搭載されている次世代の高感度赤外線分光器「WINERED」を用いて25天体を観測したところ、新たに15本の「ぼやけた星間線」を発見した。これは、赤外線波長帯でも「ぼやけた星間線」の高精度な観測的研究が初めて可能になったことを示す重要な成果だという。

 今後は、透過性の高い赤外線波長帯を用いることで、これまで観測が難しかった銀河系内の広い領域、分子雲などの高密度環境といった星間減光が強い領域で「ぼやけた星間線」の観測が可能となり、「ぼやけた星間線」を引き起こしている有機分子の性質・生成過程の理解に大きな進展があることが期待される。

 なお、この内容は2月20日に「The Astrophysical Journal」オンライン版に掲載される。

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