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【コラム 梁瀬洋】オリンパス、リコー、柔道連盟に共通していたパワハラ体質
【9月7日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
■逆境を撥ねのけた「金メダル」
8月にロシア・チェリャビンスクで行われた柔道世界選手権では、日本選手が活躍を見せてくれました。「アウェー」という言葉を柔道で聞くのも初めてでした。
筆者を刮目させたのは、66kg級高市選手と地元ロシア選手との試合で、一旦判定された有効などのポイントが繰り返し取り消された時です。折しもウクライナの政情を巡り日本とロシアが互いに制裁を発動する緊張の中、意図的な判定とも受け取れる光景でした。
そうした逆境を見事に撥ねのけ、ロシア大統領も観戦する中での日本男子団体金メダル獲得は、武道家として、文字通り値千金の出来事だったのではないでしょうか。
日本柔道界は、ここ数年揺れていました。
女子代表選手が男性コーチによるパワーハラスメントを内部告発したことはメディアからも大きく注目を浴びました。事はそれだけにおさまらず、柔道連盟の資金の不透明な流れを指摘されて、連盟組織の体質を問われる事態にまで発展しました。
柔道の故国として、あってはならない組織運営が選手の成績にも微妙に影響したのか、2年前のロンドン五輪では日本男子は金メダルなしの屈辱に沈みました。
五輪金メダリストで講道館館長も兼ねる当時の上村理事長は、「組織再生が責務として」初め辞任しませんでしたが、第三者委員会の指摘を受け最終的に辞任、理事が柔道界以外から招かれることとなりました。
■ガイアツによる組織の自浄作用
今年の世界選手権での好成績は、柔道連盟組織の体質が少しでも変わったことが前線の選手達の心理面に敏感に反映したことも一因と分析できます。
さて、話は変わりますが、当時の理事がなかなか辞任しなかったことと、オリンパスやリコー現役社員によるパワハラ裁判とは共通点が見られます。パワハラを加える側は、共に自らの権威に依拠して行動している場合が多いことです。
その状況下では、内部通報やヘルプラインといった仕組みによる組織の自浄作用は殆ど期待できない難しいものになります。性善説に基づく日本の今の内部通報制度では考慮から全く抜けている盲点です。
それはコンプライアンスではなく前回コラムでも言及した「スティフネス」です。外圧が強いときは実害も大きくなる状態を意味します。
柔道連盟の場合は、内部告発をマスコミに公表したことで官庁を初めとする「外圧」によってようやく刷新が為されました。
一方、オリンパスの場合は現役社員によるパワハラ裁判が最高裁で敗訴しても体質を改めるつもりはさらさらないようです。
屋台骨の医療事業が好調のため顕在化しませんが、オリンパスの映像事業は5期連続の赤字という前代未聞の異常事態が続いています。トップは黒字回復の公約を果たせていません。従業員が安心して職務に専念でき、輝かしい復活を果たすために何が必要か。
日本柔道界の実例が示しています。【了】
やなせ・よう/東京都在住、1965年生まれ、大手精密製造メーカーに勤めながら、ネット投稿を通じて社会や人生の諸問題について考え続ける自称市井思想家。
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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