「掉尾の一振」銘柄として信用好需給銘柄に「第2のアルプス」、「第2のKDDI」を期待=浅妻昭治

2013年11月26日 10:09

印刷

記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

  2013年相場も、いよいよ押し詰まってきた。今週、27日の月替わりから実質の師走相場入りとなる。毎年繰り返される「モチ代稼ぎ」、「ミルク代稼ぎ」の相場到来で、大納会まで残りあと1カ月ちょっとで、マーケットはにわかに慌ただしくなる。この師走相場が、「終わり良ければすべて良し」となるのか、それとも再度の「アベノミクス相場」期待が、「龍頭蛇尾」に終わってしまうのか、すべての投資家の1年総決算のプラス、マイナスに大きく影響してくる。

  もちろん日経平均株価が、前日に高値引けして5月につけた年初来のざら場高値1万5942円にあと323円と迫り、為替相場も、1ドル=101円台後半と5月の1ドル=103.74円目前まで円安が進んでいる相場環境下、「掉尾の一振」の上昇相場の可能性が高いはずだが、なぜ「龍頭蛇尾」、「掉尾の一振」を「掉尾の三振」と心配してしまうかといえば、ニューヨークダウが連日、上場来高値を更新している米国市場から、短期的な過熱感への警戒論、大物投資家の相次ぐ弱気の相場観測が、漏れ聞こえてくるからである。米国経済も、財政協議の難航を乗り越えて、量的緩和策第3弾を縮小できりほど回復が顕著になるか不透明である。

  それに加えて東京市場には、もともと12月相場には数々の需給悪化要因が懸念されていた。主なものだけでも、年末の証券優遇税制の軽減措置廃止に伴う換金売り、ヘッジファンドの決算対策売り、裁定買い残の解消売りなどで、もし相場が上値を追うようなら、そこは、ひとまず手仕舞い売りをしておくとするのが基本スタンスとの見方も多かった。さらに、現在の株高の最大のエンジンとなっている為替相場の年末の動向も大きなポイントになる。5月の円安水準を超える円売り・ドル買いが続くかどうか、米国の金融政策次第となり、これも不透明である。

  この懸念が当たらずとも遠からずとなるようなら、師走相場は、とても今年年初の「アベノミクス相場」の初動段階のように、「八百屋の店先に並んだカブ以外のカブは全部カイ」などの「イケイケドンドン」の無差別買いを敢行するほど一筋縄にはいかないことを意味する。「掉尾の一振」を狙うとしても、銘柄選別、売買のタイミングなど慎重にも慎重を期す必要が出てくる。

  「掉尾の一振」銘柄で、まず確実なのは、IPO(新規株式公開)投資だろう。12月には、16銘柄のIPOが予定されるラッシュとなり、多分、昨年の12月20日以来、56銘柄連続で初値が公開価格を上回って形成される(勝ち)連勝記録を伸ばすことは間違いない。ただこのIPO投資は先着順で、初値形成時の高値に飛び付き買いした投資家が、必ずしも一段の高値で売り抜けられるか保証の限りでないところが、難しいところである。

  そこで別のポイントで「掉尾の一振」銘柄へのアプローチを試みたいが、この銘柄選別で参考にしたいのが、ラウンドワン <4680> である。同社株は、11月8日から前日25日までわずか2週間でストップ高を交えて56%高を演じたばかりである。この急騰の引き金となったのが、11月8日の今3月期第2四半期(2Q)累計業績の発表であった。2Q累計業績は、純利益が、特別損失の計上で期初の黒字予想から107億4000万円の赤字(前年同期は20億1900万円の黒字)へと大幅赤字転換したが、3月通期業績は、期初予想通りの75億円の赤字(前期は6億100万円の黒字)に据え置いたことから悪材料出尽くし感を強めたことが、直接の要因となった。

  もちろん、業績評価だけでは、これだけの急騰につながるわけがない。もう一つの株価要因があり、それが信用高倍率と逆日歩である。同社の信用倍率は、0.38倍と大きく売り長となっており、売り方が逆日歩攻勢でピンチとなり踏み上げさせられたことが騰勢に拍車を掛けた。しかもこの急騰場面でも、同社株の信用売り残は、なお270万株も増加しており、高値での売り方と買い方の攻防が、どちらに有利に働くか師走相場での決着が注目されているのである。

  11月5日の信用取引規制の緩和から、売買代金に占める空売り比率は上昇し、株不足から逆日歩がつく銘柄も増加しており、ラウンドワンと同様の株価推移を示す銘柄も続出している。いずれも前日25日に連日の年初来高値更新となったアルプス電気 <6770> や、前週末22日に年初来高値をつけたKDDI <9433> が、同様のケースであり、「掉尾の一振」銘柄として「第2のアルプス」、「第2のKDDI」にアタックすることが、「終わりよければすべて良し」につながる可能性がありそうなのである。

  要するに、通常の「掉尾の一振」銘柄のスクリーニングでは、どの投資主体がどのセクターに的を絞っていつ投資してくるか、見極める必要があるか、信用好需給銘柄は、売り方が買い戻すか買い戻さないか、売り残の推移をウオッチさえしていれば、動向を予測することが可能で、機敏対処が必要な「掉尾の一振」銘柄に最適ということになるのである。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

【関連記事・情報】
【高見沢健のマーケット&銘柄ウォッチ】日米の長期金利の行方(2013/11/16)
『二番天井』か、『新相場入り』か、来週は重要な見極めの週=犬丸正寛の相場展望(2013/11/15)

※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

関連記事