顕著な位置づけの缶コーヒー市場

2012年2月13日 11:00

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記事提供元:エコノミックニュース

 日本の主力である製造業が軒並み赤字・減収となるなど、右肩下がりの日本経済であるが、清涼飲料業界は、各社横ばいと言える程度で推移しているようである。清涼飲料の市場維持の理由としては、震災の影響で製造ラインが停止した影響をミネラルウォーターでカバーした面が大きい。しかしその中で缶コーヒーだけは、大きな影響を受けることなく売り上げを堅持している。

 サントリーのBOSSシリーズは2011年、対前年比で102%と市場を上回る売り上げを達成。また、キリンビバレッジのファイアシリーズは、2011年の実績は2936万箱と前年比101%で着地している。JTも主幹ブランドであるルーツの堅調な売上増により、飲料事業全体の売り上げが第3四半期累計実績で対前年比23億円増、アサヒ飲料のワンダシリーズは、CMやキャンペーンの効果も大きく、3862万箱と対前年比で108%もの伸びを示し、業界シェアを大きく伸ばしている。

 なぜ、このように缶コーヒーは堅調に推移しているのか。それは、各社が流行を的確に捉えた商品展開と、質や香りなどに対する古くからのこだわりを堅持した商品との併存が、理由としてあげられるのではないだろうか。先月サントリーから発売された「ボス リッチ オン リッチ」や、今月7日からキリンビバレッジより発売の「小岩井 濃厚カフェオレ」などが、一時期の微糖ブームが落ち着きを見せ、濃さや深さ、クリーミーさなどへの流行シフトを的確に捉えた前者の好例であろう。また、日本コカコーラが昨年販売を開始した「ジョージアクロス」も変化球ではあるが、嗜好の変化を示す商品化と言える。

 一方で、伊藤園から販売されているタリーズコーヒーシリーズは後者の例であろう。ただ流行を追うのではなく、コーヒー本来の香りや味わいを引き出すことに注力しているシリーズである。またダイドードリンコは、テレビコマーシャルで馴染みとなった「ブレんなよ!」のフレーズに象徴される「ダイドーブレンドコーヒー」や、昨年9月にフルリニューアルした「デミタスコーヒー」シリーズに見られるように、創業以来のこだわりを堅持し続けて固定ファンを獲得している代表例であろう。

 流行を追って様々な味わいを堪能するのも良い。しかし、変わらぬ味がいつでも楽しめる安心感ある商品も必須である。この二本柱が、ブレない缶コーヒー市場を作り出しているのではないだろうか。

※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。

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