ここがポイント-会社を伸ばす中小企業の採用戦略:第11回 内定を出す時の注意点

2011年11月21日 10:21

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 採用活動を通じて、ようやく「採用しよう」と思う人にたどり着けば、いよいよ内定出しとなります。これを機に、今度はこちらの投げたボールを、相手(内定者)が投げ返してくれるのを待つということになります。

 せっかく出会った人材を、何とか入社にこぎつけたいと考えるのが当然の心情ですが、ここで良いコントロールのボールを丁寧に投げなければ、ボールはこちらが思ったようには返ってきません。内定辞退となっては、また一からやり直しになってしまいます。

 これをできるだけ避けるために、内定出しの時には、どんなことに気を配ればよいのかということを解説したいと思います。

■内定を出す態度や姿勢
 これまで繰り返しお伝えしていることですが、採用活動においては、会社と応募者がイーブンな関係を保つことが重要です。しかし、「応募者」が「内定者」になることで、この関係性も変わってしまうことがあります。やはり選択の主導権が「会社」から「内定者」に移るということがあるからでしょう。

 中小企業の場合によくあるのは、「どうしてもこの人に来て欲しい」と惚れ込んで、プッシュやアプローチを強めたり、「要望は何でも聞きます」とばかりに、へりくだってしまうようなことです。逆に採用基準ギリギリの場合、「仕方ないから入れてやる」というような、横柄な態度を見せる人もいます。

 これほど極端ではなくても、一人一人の仕事の持ち分が大きい中小企業では、一人の人材で一喜一憂するところがあります。どこかで態度に出てしまっていると思っていた方が賢明かもしれません。

 入社を強く望まれていることを、熱意を持って伝えられて、悪い気がする人はいません。これについては本心を一生懸命伝えているということなので良いのですが、入社して欲しいあまりに、条件取り引きのようなことをしようとする場合があります。これについては、無理して相手に合わせようとすることですから、後々のことを考えればお勧めできない行為です。会社側が下手に出過ぎて良いことはありません。

 また内定者の方からいろいろな条件を出してくるようなことがありますが、これも見えている現状では本人が満足していないということですから、会社との相性があまり良いとは言えません。(入社前に注文が多い人は、入社した後も注文が多いものです。)やはりここでも、無理して相手に合わせようとすると、入社後に様々な影響が出てしまいます。

 内定出しの際の態度としては、お互いの関係性をイーブンに保つこと、偉ぶらず、へりくだり過ぎずに、平常心を保つこと。また内定者はこれから仲間になろうという人ですから、できるだけ本音でコミュニケーションをすることが重要であろうと思います。

■自社への志望度をどう見極めるか
 特に新卒採用などでは、採用数を調整しなければなりませんから、内定者のいわゆる“歩留り”を把握する必要があります。中途採用でも、その人が入社してくれるのか否かで、社内体制の構想が変わってしまいます。内定承諾の成否を、できるだけ事前に把握するには、どうすれば良いかというお話です。

 ほとんどの応募者は、面接のときには「御社が第一志望です」または遠回しでも「志望度が高い」と言います。私は自分が面接を受けた時、志望度が高くない会社に嘘をつくのがイヤで、正直に言ってしまっていました。今となれば「だからダメだったのかも・・・」などと思ってしまいますが、そんな人は圧倒的に少数派でしょう。

 ではどうやって見極めればよいのか・・・。私もたくさんの試行錯誤をしましたが、その結論は、「結局腹を割って直接話すのが一番確実だ」ということです。

 直接会って話す中で、こちらの評価や熱意を伝え、相手の状況をストレートに聞くことです。「今何社受けていて、うちの会社は何番目ですか?」「他の会社はどんなところがうちより良いですか?」「何を重視して決断しますか?」などなど。会社としての都合や内実もきちんと伝えるべきです。「○○までなら返事が待てる」「ここは考慮できるがここはムリ」「こんな課題がある」などなど。

 相手の本心を聞き出すには、こちらも本音でぶつからなければなりません。本音を言うことで自分にデメリットはないとわかってもらえれば、相手も意外に何でも話してくれるものです。この“本音でぶつかる”という所がミソになります。

 新卒採用で「良い学生が大勢採れた」と喜んでいたら、2カ月後に8割の人が内定辞退してしまったなんていう、笑えないホントの話がたくさんあります。たぶん書類を受け取ることで安心して、きちんとコミュニケーションを取っていなかったのでしょう。

 こんなことにならないためにも、必ず本人と直接、“本音” でぶつかって話し合っておくことをお勧めします。

■中途採用の給与設定
 どうしても採用したい人材となると、相手の希望に合わせる、前給に合わせるために、特別扱いの給与設定をしようとする会社があります。気持ちはわかるのですが、私は絶対に避けるべきだと思います。やっぱり特別扱いしなければならない人とは、縁が無いと考えるしかないのです。

 私もかつて、給与調整の対応を何人か経験しましたが、多くの人が「今一つ期待はずれ」という評価になってしまいました。これは採用された人の能力が一概に低かったのではなく、給与を積み増すことで、結果的に会社側が、勝手にハードルを上げてしまったという部分があります。

 会社から既存社員とのバランスを欠くような条件を出したとすると、内定者を“過大評価して入社させる状態”になります。この期待に応えてくれれば良いですが、上げたハードルをクリアすることはなかなか難しいものです。せっかく入社したのに、仕事ができないとレッテルを貼られ、周りの社員からソッポを向かれるなどと言う事態になりかねません。会社と本人の両方が困ることになってしまいます。

 制度化されているか否かにかかわらず、給与はその会社独自の相場があります。誰がいくらもらっているかを公表する会社は稀でしょうが、役割やポジションといった所で、自分より上か下かぐらいの想像はつきます。周囲はその役割やポジションに見合った仕事ぶりを要求し、それに応えられるかどうかでその人を評価します。ハードルを上げていることも知らないし、知ったとしても大目には見ません。エスカレートすると「なんでこんな人を採用したのか」などと、採用活動自体を批判する者も出かねません。

 給与設定に関しては、あくまで自社の序列内での設定が原則です。特別扱いは結局軋轢を生み、会社、既存の社員、採用された人のすべてにとって、マイナスとなってしまいます。

 どうしても調整が必要ならば、「ハードルを上げた状態にしない」「自社の序列に組み込んでいくステップを考えておく」「解消しきれない調整は行わない」といったところの配慮が必要ではないかと思います。

 前からお伝えしているように、採用活動は「縁談」のようなものです。「商談」ではありません。そう考えれば、やはり過度な駆け引きや取り引きはなじみません。

 これから仲間になるかもしれない「内定者」。今まで以上に本音で接することが、一番大切ではないかと思います。

 次回は、内定してから入社までの期間の取り組みや注意点について、お伝えしようと思います。

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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